下の歯がガタガタしていると、「見た目だけの問題なのか」「放っておいても大丈夫なのか」と不安に感じる方は少なくありません。実は、下の歯の乱れは見た目だけでなく、虫歯や歯周病、噛み合わせの悪化など、さまざまな悪影響につながる可能性があります。この記事では、下の歯がガタガタになる原因や起こり得る問題、マウスピースやワイヤーなどの治療方法について、歯科医師の視点から分かりやすく解説します。
下の歯がガタガタに並んでいる状態は、歯科では「叢生(そうせい)」と呼ばれ、多くの方に見られる歯並びの乱れです。特に下の前歯は歯列の中でもスペースが限られており、さまざまな要因の影響を受けやすい部位といえます。
下の歯のガタガタは見た目だけの問題ではなく、噛み合わせや清掃性にも関わるため、原因を正しく理解することが大切です。ここでは代表的な5つの原因について詳しく解説します。
下の歯がガタガタになる原因として最も多いのが、下顎の大きさが小さいことです。歯は本来、顎の骨の上に一定のスペースを確保して並びますが、下顎が小さいと歯がきれいに収まる余地が足りなくなります。その結果、歯が前後に重なったり、内側や外側にずれて生えてしまいます。
特に日本人は骨格的に下顎が小さい傾向があり、下の前歯にスペース不足が起こりやすいのが特徴です。顎のサイズは先天的な原因であることも多く、血縁者に同じような歯並びの人がいるとリスクは高まります。
綺麗な歯並びを獲得するためには顎と歯のサイズのバランスが大切です。顎の大きさに問題がなくても、歯自体が大きい場合には歯並びが乱れやすくなります。歯のサイズには個人差があり、顎に対して歯が大きいと、歯列全体に余裕がなくなります。そして、歯同士が押し合うような形になり、重なり合って生えてしまいます。
歯のサイズは生まれた後の生活習慣などによって変わるものではなく、先天的なものなのでサイズが大きくなることを防ぐことは難しいです。顎の遺伝と同様、血縁者と似るので、血縁者の中にお悩みの方がいると可能性は高まります。
日常生活の中で無意識に行っている口腔悪習癖も、下の歯並びを乱す原因となります。舌で下の前歯を押す癖や口呼吸、頬杖、片側だけで噛む習慣などは、歯に継続的な力をかけ続けます。歯は強い力だけでなく、弱い力でも長期間加わることで少しずつ移動します。
そのため、こうした癖が続くと、下の歯が徐々に動き、歯列がガタガタになってしまいます。ご本人が自覚しづらい、「弱くて持続的な力がかかってしまう習癖」が一番厄介です。気づかないうちに歯並びへ影響していることも少なくありません。
下の親知らずが横向きや斜めに生えている場合、その影響で歯並びが乱れることがあります。下顎の親知らずは、スペース不足によりまっすぐ生えにくく、横向きに埋まった状態になるケースが多く見られます。このとき、親知らずの成長とともに手前の歯を押す力がかかり、歯列全体に影響を与えることがあります。長期間この力が加わることで、下の前歯が少しずつ重なり、ガタガタした歯並びへと変化していきます。
歯並びは一度生え揃ったら一生変わらないものではありません。年齢を重ねるにつれて、噛み合わせの力や舌・唇からの圧力の影響を受け、歯は少しずつ動き続けています。また、加齢によって歯を支える土台である歯茎や骨も少しずつ弱っていきます。
特に下の前歯は、このような加齢の変化とともに真ん中側へ倒れたり、重なりが生じやすい部位です。そのため、若い頃は問題なかった歯並びでも、大人になってから下の歯がガタガタしてきたと感じる方は少なくありません。
下の歯がガタガタしていても、日常生活に大きな支障がなければ「このままでも問題ないのでは」と感じる方も多いかもしれません。しかし、歯並びの乱れを放置することで、口腔内だけでなく全身にもさまざまな悪影響が及ぶ可能性があります。ここでは、下の歯のガタガタを放置した場合に起こりやすい代表的なリスクについて解説します。
下の歯がガタガタしていると、歯と歯が重なっている部分や奥まった部分に歯ブラシが届きにくくなります。その結果、磨き残しが増え、プラークや歯石がたまりやすくなります。プラークは虫歯菌や歯周病菌の温床となるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。特に下の前歯は近くに唾液のでる出口があるため、元々歯石が付きやすい部位でもあります。
歯並びが悪い状態を放置すると、気づかないうちに歯周病が進行してしまうことがあります。また、ガタガタで歯の重なりが大きいと虫歯になっていても気づきにくく、治療が遅れることがあります。治療後も虫歯や歯周病を繰り返しやすく、歯の寿命が短くなる傾向にあります。
下の歯のガタガタを放置すると、上下の歯が正しく噛み合わず、噛み合わせが乱れることがあります。噛み合わせが悪い状態が続くと、特定の歯や顎に過度な負担がかかり、顎関節症や不必要な噛み締めを引き起こす原因になることがあります。
また、噛み合わせの乱れは、首や肩のこり、頭痛、姿勢の悪化など、全身の不調につながることもあります。口の中の問題が、全身のバランスに影響を及ぼす、という点には注意が必要です。
歯並びは発音にも大きく関係しています。下の歯がガタガタしていると、舌の動きが制限されたり、息の通り道が不自然になったりするため、発音が不明瞭になることがあります。特に「サ行」や「タ行」などは歯と舌の位置関係が重要で、歯並びが乱れていると滑舌が悪く感じられることがあります。
発音や滑舌の悪さが原因で人とのコミュニケーションに消極的になったり、人前で話すことを拒むなど、様々な面で影響を及ぼす可能性があります。
下の歯がガタガタしていると、歯のあたりが不均衡になり、噛む力が一部の歯に集中しやすくなります。その結果、特定の歯に過度な負担がかかり、歯が欠けたり、すり減ったりするリスクが高まります。
また、歯並びが悪いことで歯ぎしりや食いしばりが起こりやすくなり、知らないうちに歯や詰め物、被せ物を傷めてしまうこともあります。最悪の場合には歯が大きく割れたりすることで抜歯に繋がることがあります。若いころはさほど気にならなくても、長期的に見ると歯の寿命を縮める原因に充分なりえます。
ガタガタの歯並びを放置するリスクについてはこちらもご覧ください
下の歯のガタガタは、矯正治療によって改善が可能です。現在は、見た目への配慮や生活スタイル、歯並びの状態に応じて、複数の治療方法から選択できるようになっています。ここでは、下の歯のガタガタを改善する代表的な3つの方法について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
マウスピース矯正は、透明な装置を段階的に交換しながら歯を少しずつ移動させる治療方法です。装置が目立ちにくいため、仕事や日常生活で人目が気になる方でも取り入れやすい点が大きなメリットです。
また、取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際のストレスが少なく、口腔内を清潔に保ちやすい特徴があります。一方で、1日20時間以上の装着が必要とされることが多く、装着時間を守れないと治療効果が十分に得られません。歯並びの状態によっては、適応できないケースもあります。
ガタガタを並べるためにはスペース確保が必要不可欠ですが、そのための遠心移動や側方拡大などは得意です。抜歯を行う場合や歯に回転をかける動作はやや苦手で、時間がかかる場合があります。
ワイヤー矯正は、歯にブラケットを装着し、ワイヤーの力を利用して歯を動かす矯正方法です。長年にわたり行われてきた実績があり、軽度から重度まで幅広い症例に対応できる点が大きな強みです。下の歯のガタガタが強く抜歯を伴う大きな移動が必要な場合でも、確実な歯の移動が期待できます。
一方で、装置が固定式で目立ちやすく、歯磨きがしにくくなるため、虫歯や歯周病の予防には丁寧なケアが欠かせません。また、装着直後や調整後に痛みや違和感が出やすい点もデメリットといえます。
セラミック矯正は、歯を動かすのではなく、歯を削ってセラミック製の被せ物を装着し、歯並びや見た目を整える方法です。短期間で歯並びをきれいに見せられる点が最大の特徴で、結婚式や就職活動など、期限が決まっている方に選ばれることがあります。ただし、ガタガタな歯をセラミック矯正で治すためには、健康な歯を大きく削ったり、神経をとる場合もあります。
また、見た目は整っても、根っこごと整えているわけではないので、根っこの部分には不自然な力がかかります。セラミック矯正は歯全体への負担が大きく、長期的に見ると歯の寿命を縮めてしまいかねません。削ってしまった歯は取り戻せませんので、将来的なリスクも考慮して、慎重に検討することをおすすめします。
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下の歯のガタガタを治す際に気になるのが、どのくらいの期間がかかるのか、また費用はどの程度必要なのかという点です。治療方法や歯並びの状態によって差はありますが、ここでは一般的な目安について解説します。
下の歯のガタガタを治す期間は、症状の程度や選択する治療方法によって異なります。前提として、下の前歯自体は根っこが細く短いため動かしやすい歯です。そのため、下の前歯のみを動かせば整うような、軽度のガタガタであれば、部分矯正として6ヶ月〜1年程度で改善できるケースもあります。
一方、歯の重なりが強い場合や噛み合わせ全体の調整が必要な場合は、動かすのに時間のかかる奥歯も整えなければならないので、1年半〜2年程度かかることも珍しくありません。
マウスピース矯正は計画通りに装着できれば比較的スムーズに進みますが、装着時間が不足すると治療期間が延びる可能性があります。ワイヤー矯正は安定した力をかけられる反面、歯科医師による調整を行わないと治療が進まないため、通院・調整の頻度によって期間が左右されます。
費用についても、治療方法や範囲によって幅があります。下の歯のみの部分矯正の場合、マウスピース矯正やワイヤー矯正で20万〜70万円前後が一つの目安です。全体矯正になると、80万〜120万円程度かかることもあります。セラミック矯正は1本あたり数万円〜十数万円かかるため、本数が増えるほど費用は高くなります。
加えて、医院によっては検査料や調整料、保定装置の費用が別途必要になる場合もあるため、カウンセリング時に総額を確認することが大切です。
下の歯のガタガタが気になっているものの、「どの治療が合っているのかわからない」「まずは話だけ聞いてみたい」と感じている方も多いのではないでしょうか。MeLoSでは、専門のスタッフが患者様のお口の中の状況やお悩みを丁寧にお伺いし、一人ひとりに合った選択肢をご案内します。矯正治療が必要な場合は、お近くで矯正治療を受けられる提携クリニックのご紹介も可能です。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にLINEよりご連絡ください。