差し歯があっても歯列矯正はできる?確認したい注意点や治療の流れ  
2025年12月27日 インビザライン

この記事を監修した人

MeLoS認定アライナー矯正教育担当講師。長崎大学歯学部卒業、東京医科歯科大学病院総合診療科にて研修後、複数の歯科医院で勤務しインビザライン矯正やインプラント、口腔外科分野を含む各種治療経験を豊富にもつ。歯科医師むけ専門書の翻訳なども行う。

差し歯があると「矯正はできないのでは?」と不安に感じる方も多いかもしれません。しかし、差し歯があっても歯列矯正は可能であり、実際に対応している症例も少なくありません。ただし、天然歯の場合とは異なる注意点や治療上の配慮が必要になります。

 

本記事では、差し歯がある場合の矯正方法やリスク、治療の流れについて、わかりやすく解説します。これから矯正を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

 

差し歯があっても歯列矯正はできる?

差し歯があっても、歯列矯正を行うことは可能です。一般的に差し歯と呼ばれるものは、歯の被せ物の部分は人工物ですが、根っこ部分は御自身のものです。天然の歯の根っこには歯根膜というものがあります。

 

この膜は歯列矯正には必要不可欠で、矯正治療で歯に力がかかると、この膜が引っ張られたり押されたりして歯周囲の骨細胞を活性化させ、代謝が起こり、歯が動きます。つまり、差し歯でも歯根膜のある天然の根っこが残っている歯は矯正治療で動かすことが可能だということです。もちろん土台の状態や被せ物の素材、歯周組織の健康状態も考慮したうえで慎重に計画が立てられるため全てが自由に動かすことができるとは限りません。

 

また、治療途中や治療終了時に差し歯の作り直しが必要になる場合もあるでしょう。一方で、インプラントは根っこの部分も人工物であり歯根膜がありません。そのため、インプラント部分はどのような手法を使っても矯正治療で動かすことができず、周囲の歯を移動させることで歯並び全体を整えることになります。

 

差し歯がある場合の歯列矯正の方法

 ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーを用いて歯を段階的に動かす伝統的な矯正方法で、差し歯がある場合でも比較的対応しやすい治療法です。歯にかける力を細かく調整できるため、歯のねじれや大きな位置移動が必要な複雑な症例にも適しています。

 

ただし、差し歯は天然歯と比べて接着強度が異なるため、通常の接着方法ではブラケットが外れやすく、専用の接着材や補強処理が必要となります。治療期間は症例によって異なりますが、平均的には1年半〜3年程度が目安です。メリットとしては、安定した歯の移動が可能で症例の適応範囲が広い点が挙げられます。

 

一方で、装置が目立ちやすく、違和感や痛みが出やすいこと、矯正装置周辺の清掃が行き届かないと虫歯や歯周病のリスクが高まる点はデメリットです。また差し歯の位置によっては治療途中で被せ物の作り直しや見た目の調整が必要になることもあり、事前説明が重要になります。

 

マウスピース矯正

マウスピース矯正は、少しずつ形の異なる透明なマウスピースを交換していくことで歯を少しずつ動かす方法で、差し歯がある場合でも見た目への影響を抑えて治療を行える点が大きな特徴です。差し歯そのものは構造上大きく移動させにくい場合がありますが、周囲の歯の位置をコントロールすることで全体のバランスを整える治療が可能です。

 

治療期間は軽度であれば1年ほどで完了するケースもありますが、差し歯の位置や噛み合わせの状態によっては2年以上かかる場合もあります。大きなメリットは見た目の良さと取り外し可能な点で、食事や歯磨きもしやすく口腔内を清潔に保ちやすいことです。

 

一方で、1日22時間以上の装着が必要となり、装着時間が不足すると効果が得られにくくなるため患者様御自身での管理力が求められます。また症例によっては適応が難しい場合もあるため、精密検査と治療計画の確認が不可欠です。こちらの矯正方法も差し歯の状態によっては治療途中や治療後に差し歯の作り直しや調整が必要になることがあります。

 

インビザラインの装着時間についてはこちらもご覧ください

 

差し歯がある場合の歯列矯正の注意点

差し歯があっても歯列矯正は可能ですが、考慮しなければならない点がいくつかあります。治療後に「こんなはずではなかった」とならないよう注意点を事前に理解して、歯科医師との相談をよくした上で治療開始しましょう。

 

矯正中に差し歯が取れてしまう可能性がある

差し歯がある状態で歯列矯正を行う場合、矯正中に差し歯が外れてしまうリスクがあります。天然歯はつなぎ目がなく根っこから頭の部分まで一塊ですが、差し歯は天然歯とは異なり、根っこ+土台+被せ物と複雑な構造担っていてそれぞれが接着剤で繋ぎ止められています。そのため、矯正力や噛み合わせの変化によって接着部分に負荷がかかりやすくなり、矯正治療の途中で差し歯がぐらついたり一部脱離したりする可能性があります。

 

脱離したまま放置すると歯根や土台にダメージが生じる恐れがあるだけでなく、矯正治療の動きも想定通り進まなくなりますので、差し歯部分に異変を感じた場合はすぐに歯科医師へ相談することが重要です。

 

また、差し歯の土台部分が弱っている場合は、軽い衝撃でも外れる可能性が高くなるため、事前に補強処置などが必要になることもあります。

 

矯正後に差し歯の作り直しが必要なケースがある

歯列矯正によって歯の位置や角度が変化すると、矯正前に作られた差し歯が口元のバランスや噛み合わせに合わなくなることがあります。そのため、矯正後に新しい歯並びに合わせて差し歯を作り直す必要が生じるケースも少なくありません。

 

特に前歯の差し歯は見た目への影響が大きく、色味や形、長さの微調整が求められることがあります。また、噛み合わせが変わることで差し歯に過剰な負担がかかる場合もあり、機能面の観点から再製作が推奨されることもあります。

 

矯正治療を受ける場合は、事前にこの可能性を理解し、費用や期間を含めた計画を立てることが大切です。審美面だけでなく発音や咀嚼への影響も考慮し、最終的な仕上がりを見据えた調整を行うことが重要です。

 

口腔トラブルを併発しやすくなる

差し歯がある状態で矯正装置を装着すると、口腔内の清掃が難しくなり、虫歯や歯周病などのトラブルが起こりやすくなります。差し歯は前述の通り、被せ物と根っこの間につなぎ目があります。

 

このつなぎ目差し歯治療終了直後はしっかりくっついていますが、時間が経つとともに劣化して汚れが溜まりやすくなる傾向にあります。これに加えて矯正装置の影になる部分も増えるため、衛生状態が悪くなりやすく通常以上に丁寧なケアが求められます。

 

さらに、矯正による力が歯周組織に影響を与えることで歯ぐきが炎症を起こしやすくなることもあります。これらのトラブルが進行すると矯正の一時中断につながる場合もあるため、日常のブラッシングに加えて定期的なプロフェッショナルケアを受けることが重要です。フロスや歯間ブラシの併用、洗口液の活用などセルフケアの質を高めることも予防につながります。

 

差し歯がある場合の歯列矯正の流れ

STEP1.カウンセリング

差し歯がある状態で矯正を検討する場合でも、まず最初に行うのがカウンセリングです。ここでは患者様が抱えている不安や悩み、どの程度の見た目改善を希望するのか、噛み合わせや機能面で困っていることがあるかなどを丁寧にヒアリングします。差し歯の本数、素材、作製からどれくらい経過しているかといった情報も、矯正方法を選択するうえで重要な判断材料になります。

 

また、差し歯が治療の過程で外れやすい状態にあるかどうか、治療後に作り直しが必要となる可能性についても、この段階である程度説明されることが多いです。カウンセリングは治療方針の方向性を決める大切なステップであり、患者様と歯科医師が十分にコミュニケーションを取ることが、後の満足度にも直結します。

 

STEP2.精密検査

次に行うのが精密検査です。レントゲン撮影、CT撮影、口腔内写真、歯型のスキャンなどの詳細な資料採得を行い、差し歯の土台部分の状態や周囲の歯周組織の健康状態、骨の厚みや位置なども詳細に確認します。差し歯がどれほど強固に接着されているか、内部の歯根が矯正の力に耐えられるか、根っこの先に病巣などがないかなども重要な診断ポイントになります。

 

さらに、虫歯や歯周病がある場合は、矯正に先立って治療が必要となるため、この段階で口腔内全体の問題点を洗い出し、治療の順序なども決めていきます。精密検査は「矯正が可能かどうか」「優先順位はどのようにすべきか」を判断するための必須行程であり、差し歯がある場合は特に慎重な評価が求められます。

 

STEP3.治療計画の作成・ご説明

精密検査の結果をもとに、患者様一人ひとりに合わせた治療計画が作成されます。差し歯の位置や状態を踏まえて、ワイヤー矯正かマウスピース矯正のどちらが適しているかが決定されます。また、歯の移動量、治療期間の目安、費用、使用する装置の特徴やリスクについても詳しく説明されます。

 

差し歯が治療後に歯列や噛み合わせと合わなくなる可能性がある場合は「将来的に作り直しが必要になる」という点も重要な情報として共有されます。患者様が納得して治療に進めるよう、ここで細かな疑問点をすべて解消することが求められます。

 

STEP4.矯正治療の開始

治療計画に同意が得られたら矯正治療がスタートします。ワイヤー矯正の場合、ブラケットを歯に直接装着して少しずつ歯を動かしていきますが、差し歯の部分には接着強度の問題から専用の手法が使われることもあります。

 

マウスピース矯正の場合は、差し歯に過度な負担がかからないようフィット感を調整しながら治療を進めます。治療開始直後は痛みや違和感が出ることがありますが、ほとんどの場合は数日で落ち着きます。差し歯周辺の状態を確認しながら、無理のない力で進めていくことが大切です。

 

STEP5.定期検診・経過観察

治療中は数週間から数ヶ月ごとに定期検診が行われ、歯の移動状況や差し歯の状態を細かく確認します。矯正装置の調整、ワイヤーやマウスピースの交換、歯ぐきの炎症や虫歯のチェックも同時に行われます。

 

差し歯が緩んでいないか、噛み合わせに偏りが生じていないか、装置の影響で口腔トラブルが発生していないかなど、細かい点まで確認していきます。異変があれば早い段階で対応することで、治療計画の大きな遅れを防ぐことができます。

 

STEP6.治療終了

歯並びと噛み合わせが計画通りに整ったら、矯正装置を外し治療が完了します。この段階で差し歯の形態が現状の噛み合わせに適していない場合、新しく作り直す提案が行われることもあります。見た目・機能の両面から整え、自然で美しく健康な口元を仕上げるための最終調整が行われます。

 

STEP7.保定期間の開始

矯正後は後戻りを防ぐため、リテーナーと呼ばれる保定装置を使用します。差し歯も根っこが天然であるため、後戻りは起こります。歯の固定は必要であり、保定期間をしっかり守ることで綺麗に仕上がった歯並びを長期的に維持できます。

 

保定期間やその後も、定期的に歯科医院での専門的なメンテナンスを行い、リテーナーの状態や差し歯の健康状態をチェックすることで安定した口腔環境を保つことができます。

 

差し歯がある状態で歯列矯正を検討している方は、MeLoSにご相談ください

差し歯があるけど歯列矯正を検討したい!という方は、ぜひMeLoSにご相談ください。専門のスタッフが現在の歯並びや差し歯の状態、治療歴やご希望を丁寧にヒアリングし、最適な治療方針をご提案いたします。また、お住まいの地域に応じてインビザライン矯正に対応した提携クリニックのご紹介も可能です。

 

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