インビザラインとは透明で少しずつ形の異なるマウスピースを交換していくことで歯並びを整える、近年人気のある矯正方法です。
しかし、この治療方法について、なんとなく言葉は聞いたことがあるけれど実際どのようなものなのかはイマイチ知らない……という方も多いかと思います。
この記事では、皆様が知りたいトピックのうち、「顎関節症とマウスピースの関係」について詳しくご説明していきます。
顎関節症とは
・顎または顎周囲が痛む
・口を大きく開けられない、開けづらい
・口を開けたり顎を動かすと「カクカク」「じゃりじゃり」「パキッ」のような音がする
という症状がある状態を指します。
顎関節症の原因は様々で、いくつかの原因が複合していることも少なくありません。
確実な治療法は確立されておらず、食事や会話にも支障をきたしたり、肩こりや頭痛のような不定愁訴に繋がったりと長く悩んでいらっしゃる方も多い疾患です。
顎関節症の症状は多岐に渡ります。
また一つだけでなくいくつも併発することも多いです。
その中でも特に訴える方の多い症状が
・顎の痛み
・開口のしづらさ
・開口時の痛みです。
以下でそれぞれについて詳しくご説明いたします。
顎関節症の代表的な症状で最もわかりやすいのは、食事や会話をする際に顎の関節部やその周囲の筋肉に感じる痛みです。
ひどい場合、顎を安静にしている時でも痛みを感じる場合があります。
大きいものや硬いものを噛むと顎関節や咀嚼筋に負担がかかるので痛みが出やすくなります。
お口を大きく開けようとしても痛みやこわばり、引っかかりを感じて開けることができないというのも訴える方が多い症状です。
健康な顎関節であれば3横指(指3本を縦に並べた長さ)以上お口をあけることが出来ますが、顎関節症の方は2横指以下しか開けることが出来なくなってしまいます。
十分にお口を開けることができないと食事や会話が思うようにできないだけでなく、歯科の治療を受けるのにも制限が出てきてしまいます。
顎関節症になるとお口を開けた時に顎関節のあたりが「カクカク」「じゃりじゃり」「パキッ」というような音が鳴る方もいます。
この症状は痛みやひっかかりを伴うこともありますし、それらは特になく音がなるだけのこともあります。
音の原因は関節円板のズレや骨の変形などが考えられます。
では、なぜ顎関節症になってしまうのでしょうか。
もちろん先天性の顎関節異常の場合もありますが、多くの場合は日常生活の中で後天的に発症します。
顎関節症の原因も本当に様々で、断定するのは難しいとされていますが、原因として考えられている代表的なものを以下でご説明いたします。
歯並びが悪いと一部に過剰な負担がかかったり、左右のバランスが崩れたりして顎関節に偏った力がかかるようになります。
これによって顎関節がうまく機能しなくなり顎関節症を発症してしまいます。
また噛み合わせが悪いと食べ物を効率的に咀嚼することができず、それを補うためにお顔周りの筋肉も緊張してしまいます。
筋肉の緊張が顎周りの痛みを誘発することもあります。
通常、人は唇を閉じていても歯と歯は接触していません。
食べ物を噛む時のみ歯は接触し、その平均時間は一日あたり20分前後と言われています。
しかし、歯ぎしりや食いしばりをしていると、本来は歯と歯が接触していないはずの時間にすり合わされ、その間ずっと顎周りの筋肉は緊張状態となっています。
これにより筋肉の疲労や顎関節への負担が起こり、顎関節が障害され、さまざまな症状を引き起こします。
歯ぎしりや食いしばりは、歯科受診や家族や友人に指摘されたことで初めて気づいた、というような自覚のない方も少なくありません。
無意識にやっている生活習慣が、顎関節に負担をかけ、顎関節症の原因となっていることがあります。
顎関節症になりやすい悪習慣として多いのは以下の通りです。
・悪い姿勢
・頬杖
・うつ伏せ寝
・左右どちらかに偏ったかみぐせ
また、日常生活におけるストレスが増加すると、全身の筋肉が緊張しやすくなり、顎関節周りの筋肉も影響を受けます。
ストレスは食いしばりや歯ぎしりにも関係しますので、顎関節症の原因の一つとして十分に考えられます。
顎関節症が歯並びや噛み合わせによって引き起こされている場合、マウスピース矯正を行うことで症状が改善することがあります。
顎関節症を引き起こしやすい不正咬合について詳しくご説明いたします。
開咬(オープンバイト)とは、上下の歯を噛み合わせた時に奥歯のみが噛んで、前歯が噛まない状態で隙間ができてしまう不正咬合の1つです。
この噛み合わせの方は、前歯が噛み合わず、奥歯のみに負担がかかるため顎関節症を引き起こしやすいです。
また前歯は顎を前後左右に動かした際に顎の動きのガイドとなる働きがあります。
開咬の方はこのガイド機能がうまく働かず、顎の運動が過剰になり顎関節に負担がかかります。
マウスピース矯正で外に開いた上下の前歯を内側に入れ込み適切に噛み合うように並べ、さらに奥歯の噛み合わせを整えることで奥歯と顎関節の負担を軽減することができ、顎関節症の改善を期待することができます。
過蓋咬合(ディープバイト)とは上下の歯を噛み合わせた時に上の前歯が下の歯を大きく覆ってしまうような不正咬合です。
過蓋咬合は噛む力が強い傾向にあり、奥歯に過剰な負担がかかりやすいため、顎関節にも大きな負担がかかり異常をきたすことがあります。
マウスピース矯正を行って上下の前歯の被蓋を正常にすることで噛む力を前歯と奥歯の両方でバランスよく支えることができるようになり、顎関節への負担軽減が見込めます。
交叉咬合(クロスバイト)とは上下の歯を噛み合わせた時に一部反対の被蓋となる不正咬合です。
通常であれば上の歯は下の歯より外側に並んでいますが、交叉咬合では上の歯が下の歯より内側に入ってしまっている部分があります。
歯並びがずれていることで、左右の奥歯や顎にかかる力が不均等になってしまい、顎関節症を引き起こしやすくなります。
マウスピース矯正で正常な被蓋へと治すことで負担を軽減し、顎関節症の症状を改善させることが見込めます。
しかし、顎の変形を伴う重度の交叉咬合ではマウスピース矯正の適応とならない場合があります。
マウスピース矯正を行っても改善が見込みにくいケースもあります。
代表的なものについてそれぞれご説明していきます。
顎関節症が重度であると、マウスピース矯正で歯ならびをなおしたとしても症状の改善があまり感じられないことがあります。
顎関節症の症状は多岐に渡りますが、その中でも開口障害と呼ばれる症状は重い症状です。
関節や筋肉の炎症のみにとどまらず、顎関節の変形や関節円板の癒着などを引き起こしている可能性があります。
また、顎関節症によって肩こりや頭痛めまいのような全身症状が出ている場合も重度と判断されます。
このようなケースでは顎関節症を専門にしている外来などを受診することをお勧めします。
マウスピース矯正で顎関節症を改善することができるのは、顎関節症の原因が歯ならびによる場合のみです。
顎関節症は歯ならび以外にも姿勢や習癖、ストレスなどが原因であったり、それらが複合していることも多くあります。
そのため、マウスピース矯正で歯ならびをなおしたからといって顎関節症が改善するとは限りません。
歯ぎしりや食いしばりは顎関節症の原因となりますが、その症状が強いとマウスピース矯正は不向きです。
歯ぎしりや食いしばりは普段のお食事などで噛む時の数倍の力が歯や顎にかかります。
そのため、マウスピースを装着したまま歯ぎしりや食いしばりを行うと装置が破損したり変形を起こします。
また矯正用のマウスピースをはめることで食いしばりを誘発したり、矯正のストレスで歯ぎしり・食いしばりの頻度が高まったりすることもあります。
マウスピース矯正を始めると稀に顎を痛めてしまうことがありますが、ほとんどの場合が一時的な症状ですのでご安心ください。
顎が痛む原因としてはマウスピースの違和感や矯正治療に対するストレスなどが考えられます。
マウスピース矯正は痛みや違和感の少ない治療方法ですが、ゼロではありません。
特に治療開始直後はそれらを感じやすいでしょう。
マウスピース矯正を始めてから顎や顎周りの筋肉が痛む時はできるだけ安静にし、顎周りの筋肉やこめかみの後ろのあたりにある側頭筋をマッサージしたり温めたりして様子をみましょう。
マウスピースの痛みは新しいものにしてから2〜3日で慣れてきますので焦らずに使用を続けましょう。
しかし、我慢できないくらいの強い痛みがある場合はマウスピースが適切にはまっていなかったり、治療計画に無理がある場合があります。
強い症状が出て心配な場合は、担当歯科医師に早めに相談するようにしましょう。
この記事ではマウスピース矯正と顎関節症について詳しく説明してきました。
顎関節症の原因はさまざまで、歯ならびの悪さが原因となっているかどうかは歯科医師の診察を受けなければ判断することはできません。
MeLoSでは顎関節症と歯ならびに関して、併せてご相談いただけます。
マウスピース矯正をご検討中でこれらに関して不安や心配がある方はぜひ一度ご相談ください。
専門のスタッフが対応いたします。