インビザラインとは専用のマウスピース(これをアライナーと呼びます)を交換していきながら歯並びを変えていく矯正治療で、装置が透明で目立ちにくいため近年人気がある治療方法です。実はこのインビザラインにはいくつかの種類があり、それぞれ適応になる患者様が異なります。この記事ではインビザラインの種類について詳しくご説明していきます。
インビザラインの種類は現在「コンプリヘンシブ」「ライト」「エクスプレス」「インビザラインGO」「ティーン」「ファースト」の6種類あります。それぞれ特徴があり、適応となる年齢やお口の中の状況も違います。適応から外れたパッケージで治療を行っても良好な歯並びを獲得することはできません。患者様のお口の中の状態やご年齢、主訴にあわせて最適と考えられるものを担当歯科医師とご相談いただいたうえで決めていくことが大切です。また、インビザラインでは複数のパッケージで治療計画を立てて比較することも可能です。費用や期間、治療の精度など優先順位が決められない場合は異なるパッケージの治療計画を比較し、それぞれのメリットデメリットの説明を受けてから決定するのも良いでしょう。
最も一般的なインビザラインは「インビザライン・コンプリヘンシブ」と呼ばれるものです。治療の制限がもっとも少なく、成人の全顎矯正に用いられることが一番多いパッケージです。
八重歯や出歯・受け口、叢生、口ゴボなどほとんどの症例に対応しており、前歯から奥歯まで動かすことができます。抜歯の有無の制限もありません。3年または5年の保証期間内であれば追加アライナーも何回でも作り直すことができるので治療計画の追加が起こりやすい難症例にも向いています。また、じっくり時間と枚数をかけて治療することができるので、矯正効果を追求したい方にもおすすめです。
インビザライン・コンプリヘンシブパッケージの矯正費用は大体80〜100万ほどです。期間は約2年前後のことが多く、症例によっては3年ほどかかることもあります。適応となるのが全顎的な矯正治療のため費用は高額で期間も長い傾向になります。オルソパルスやPBMヒーリングといった光加速装置を使用すると追加で10万円前後の費用が必要になりますが、期間は短く済ませることできます。
インビザライン・ライトパッケージは、軽度な不正咬合の矯正治療に用いられるインビザラインの方法です。
インビザライン・コンプリヘンシブパッケージと同様、前歯から奥歯まですべての歯を移動できます。
しかし、使用できるアライナー数が14枚までと限られており、アライナーの追加も2回までです。
また、使用できるアライナーが14枚までだからといって、無理やり14枚までで治療計画を立てることはできません。
さらに、インビザライン・ライトパッケージには治療完了までの期間が2年以内と決められています。
仮に14枚までのアライナーで治療が困難な場合、あるいは治療が2年以上かかる場合は、コンプリヘンシブパッケージへの変更が必要です。
インビザラインライトパッケージもコンプリヘンシブと同様に前歯から奥歯まで全ての歯を動かすことが可能です。しかし、使用できるアライナーの枚数に制限があり、片顎につき14枚となります。また、治療期間も2年以内と制限がありますので、もし追加の治療計画が必要になっても何回もやり直すことはできません。14枚のアライナーで動かし切れるような軽度の叢生やすきっ歯など、非抜歯で移動量の少ない症例の方に向いています。また、以前していた矯正の後戻り治療にもお勧めです。
費用はコンプリヘンシブより安く設定されていることが多く、30〜60万ほどです。治療期間は14枚以内のアライナーで終了することができれば半年ほど、パッケージの制限として最長は2年までと決められています。もし14枚以内での治療が難しい、もしくは2年以上かかると歯科医師が判断した場合はコンプリヘンシブパッケージへの変更が可能です。
ライトよりさらに適応症例を狭めて、治療期間や費用を抑えたものがインビザラインエクスプレスです。このパッケージはライトよりさらに使用できるアライナーの枚数が減るため、動かせる範囲もかなり限定的となります。
インビザラインエクスプレスパッケージでは片顎あたり7枚までです。また追加アライナーは1回のみ可能です。使用できるアライナーの枚数がライトパッケージよりもさらに半分であるため、動かすのに時間のかかる大臼歯は動かすことができません。前歯から小臼歯までの歯のみに限定して動かすことになるので、すでに大臼歯の噛み合わせが良好で、1歯・2歯程度わずかに移動させたいようなごく軽度の不正咬合の方にお勧めです。また、ライトパッケージと同じく、こちらも矯正の後戻り治療に適しています。
インビザラインのパッケージの中で最も適応範囲が狭いので費用は20〜40万程度、とかなり抑えられたものになります。また、使用できるアライナーの枚数が少ないため期間も3〜4ヶ月と短くなります。
インビザラインは成人がやるものと思ってらっしゃる方も多いですが、成長過程にある16歳以下の方でも、「インビザライン・ティーン」というパッケージでマウスピース矯正を行うことが可能です。11歳~16歳くらいの、乳歯がすべて抜けている患者様が適応となります。
インビザライン・ティーンを行う患者様ではまだ永久歯が未萌出または萌出途中の部位があります。そのため、インビザラインティーンでは「萌出スペース」や歯の萌出過剰を防ぐ「萌出タブ」をアライナー上に設定することができます。また、唾液によって色の変わる「コンプライアンスインジケータ」がついていて、患者様自身や保護者の方が目でみて装着時間を意識することができます。追加アライナーは保証期間内であれば何個でも作ることができます。10代は多感な時期です、そのような時期でもインビザラインなら目立ちにくく、見た目を気にせず矯正治療に取り組むことができます。
費用は約80万〜、治療期間は約1年〜3年です。しかし10代は成長過程であり、その成長の速度にも個人差があります。インビザラインティーンでは患者様のお口の状況と成長段階に応じて治療計画を作成し進めていきます。そのため、治療期間にはかなりばらつきがあります。
これまではマウスピース矯正といえば永久歯に対するものというイメージが強くありました。しかし、インビザラインには永久歯乳歯と永久歯が混ざった状態の混合歯列期からインビザラインを開始することができる「インビザライン・ファースト」というパッケージもあります。このパッケージは小学校低学年の学童期から適応となります。
従来の矯正治療では顎の成長と歯並びの治療を分けて行っていましたが、インビザラインファーストではこの二つの治療を同時に進めることができます。インビザラインファーストにはフェーズ1とフェーズ2の2つの展開があります。フェーズ1では乳歯の残っている混合歯列期に顎を広げて永久歯が生えてくるスペースを確保しながら歯並びを整えます。フェーズ1が終了した後、永久歯が生え揃った時点で歯科医師がさらに矯正治療が必要だと診断するとフェーズ2への移行となります。フェーズ1からフェーズ2への移行はフェーズ1開始から10年以内に行うことが必要です。また追加アライナーはフェーズ1で18ヶ月以内無制限、フェーズ2で3年間無制限に作製することができます。フェーズ2が必要になった場合も顎の成長をフェーズ1で行っているので通常の矯正よりスムーズに進めることができます。
費用はフェーズ1で60万〜70万程度、フェーズ2移行時に20〜30万程度の追加費用がかかります。期間はフェーズ1で18ヶ月以内、フェーズ2で3年以内の制限があります。小児の矯正は成長段階を見ながら進めていく必要があるため、治療期間にはかなりばらつきがあります。
一般歯科医向けのアライナー矯正としてインビザラインGOというパッケージもあります。前歯から小臼歯のみを動かす部分矯正となります。こちらでは一般歯科医でも正確な診断をつけて安全に矯正を行うために、専用のアプリで治療難易度や適応の有無を判定できる特殊なシステムを使用しています。
インビザラインGOはアライナーで前歯から小臼歯(前から5番目の歯)までを動かす部分矯正です。抜歯ケースは行えず、さらに大臼歯は動かせないので歯の大幅な移動や噛み合わせの改善は行えません。前歯部分の審美的な改善を主な目的として矯正治療を行います。
また、使用できるアライナーの数は片顎につき20枚までで、追加アライナーも1回までと制限があります。インビザラインGOで治療が難しい場合はコンプリヘンシブパッケージへの変更が必要です。
費用は30〜50万ほどで期間は約半年〜10ヶ月です。治療計画を立てる際の選択肢が他のインビザラインパッケージより少ないため、矯正前診断を行ってから治療計画が出来上がるまでの期間が短い傾向にあります。また、難易度の高い大臼歯を動かさないため、比較的治療の予測実現性を獲得しやすいです。結婚式などのライフイベントに間に合わせたい場合など、逆算して取り組みやすい部分矯正です。
この記事ではインビザラインの種類について詳しくご説明してきました。それぞれのパッケージごとに適応ケースが異なるため、患者様ご自身で必要なパッケージを決めるのは非常に困難だと思われます。MeLoSでは専門のスタッフが患者様のインビザラインに対するご質問やご不安をお聞きした上で適切なパッケージのご案内をすることができます。インビザラインが気になっているけれど自分がどのパッケージ適応になるのかわからない、という方はぜひ1度MeLoSにご相談ください。