インビザラインとは専用のマウスピース(これをアライナーと呼びます)を交換していきながら歯並びを変えていく矯正治療で、装置が透明で目立ちにくいため近年人気がある治療方法です。インビザライン治療では「クリンチェック」と呼ばれる治療計画が必須となります。この記事では従来の矯正治療では馴染みのなかった「クリンチェック」について詳しくご説明していきます。
クリンチェックとはインビザラインを始める前にコンピュータ上で歯をどのように動かしていくかをシミュレーションするソフトのことです。このソフトはインビザラインを取り扱うアライン社独自のもので、独自の技術や何百万という世界中のインビザライン患者のデータを用いて常にアップデートを続けています。歯型をスキャナーで取り込み、クリンチェックを用いて治療計画を立てることで、歯が動いていく様子だけでなく、必要なアタッチメントの位置や数、抜歯やIPRの部位などをコンピュータ上で見て確認することができます。従来のワイヤー矯正では患者様と歯科医師でゴールや治療のステップのイメージを共有するのが難しいことが多かったですが、クリンチェックは画面上で確認できるので治療の方向性を共有でき、モチベーションも保ちやすいです。また治療前にシミュレーションを使用して十分に相談することができるので患者様のご要望を治療計画に取り入れやすくなります。
クリンチェックはインビザラインを開始するにあたってなくてはならないソフトウェアです。しかし、インビザライン独自のもののため、馴染みがない方がほとんどだと思います。クリンチェックを行うことにデメリットは特にありませんが、メリットはたくさんあります。具体的にどのようなメリットがあるのか、代表的なものをそれぞれ詳しくご説明いたします。
クリンチェックを行うためにはまず患者様の歯型を光学スキャナーでスキャンします。このスキャンデータをとりこむことで、コンピュータ画面上で歯型を3Dで確認できるようになります。コンピュータ上では患者様の歯を上下左右様々な角度で確認することができます。どの歯をどのようにどのくらい動かすのか、動いていく様子を動画で確認することもできます。従来のワイヤー矯正では最終的なゴールを模型で確認することは可能でも、動いていく様子を確認するのは困難でした。クリンチェックを使用することで、インビザラインを開始してから、どのくらいの時期に歯がどのような状況になっているのかを予測することができるようになりました。また、最新のソフトウェアではCTとの重ね合わせを行い、歯根も含めてのシミュレーションも行うことが可能です。
インビザライン開始前のクリンチェックでは最終的なゴールの他に、抜歯部位やIPRの位置・量、アタッチメントの位置・数など詳細に治療計画を立てていくことになります。患者様のご要望を取り入れた微調整もクリンチェック上で行い、確認した上で治療を進めていくことができます。また、クリンチェックのシミュレーション通りに治療が進まなかった場合も、実際の歯並びとシミュレーションを見比べることで治療計画とのズレに早急に気づくことができます。ズレが生じて追加アライナーを作製する際もクリンチェックで再度治療計画を立てることができます。
クリンチェックは口腔内スキャナーを使って取った歯型のデータを使用します。従来の型取りではアルジネートもしくはシリコンと呼ばれる粘土状のものをお口全体に入れて数分固まるのを待つ、という工程が必要で、嘔吐反射のある方はとくに身体的負担が大きいものでした。また術者の技術によっては十分な型をとることができなかったり、型を取った後の取り扱いで型取り材の変形が起こってしまうこともデメリットでした。しかし口腔内スキャナーは棒状のスキャナーを使用しますので嘔吐反射のある方でも身体的負担を少なく型取りすることができ、また変形が起こる心配もありません。また、デジタルのデータは再現性が高いためアライナーのフィットがより高まります。
クリンチェックはコンピュータ上でゴールを確認することができます。最終的な歯並びを様々な角度から確認することができるのはもちろん、どの歯が何ミリ・何度動いたのかのような1歯単位の動きも詳細に確認することができます。さらに最新のクリンチェックではゴールの歯並びを患者様のスマイル顔貌写真の口元に合成した写真を作成したり、クリンチェック上で被せ物をやり直した想定をしたりすることができます。従来の模型ではイメージが難しかった部分まで詳細に確認して治療を進めることができるため、モチベーションが保ちやすく、また矯正治療後にインプラントや被せ物の治療を行う場合もスムーズに移行することができます。
では実際にクリンチェックをおこなう流れはどのようなものなのでしょうか。クリンチェック作成を含めたインビザラインの流れを項目ごとに分けてそれぞれ解説いたします。
初めに30分〜1時間のカウンセリングを行います。患者様から歯並びに対するお悩みや矯正治療に対するご希望をお聞きし、方針や料金、治療期間についてのざっくりとしたご説明をいたします。実際にお口の中を拝見して歯並び以外に虫歯や歯周病などの問題点が見つかった場合はそちらの治療についてのご説明も行います。医院によっては口腔内スキャナーでスキャンを行い、簡単なシミュレーションを確認することもできます。
インビザラインを行うために詳しい検査や資料取りが必要になります。全顎矯正か部分矯正かによって内容は多少異なりますが
・レントゲン撮影(パノラマエックス線写真、セファロ、CT)
・口腔内写真
・顔貌写真
・歯周病検査、虫歯のチェック
・口腔内スキャナーでのスキャニング
などを行います。
担当の歯科医師はこれらの資料をもとに矯正治療の治療計画を立てていきます。
精密検査で採取した資料を取り込みアライン社に送信することで3Dモデルが作成されてきます。この3Dモデルをもとに、歯科医師がクリンチェックのソフトウェアで治療計画を立てます。作成する治療計画では
・歯のゴールの位置
・歯の動き
・抜歯の有無、部位
・IPRの部位、量
・アタッチメントの位置や数
・アライナーの枚数
・治療期間、交換周期
・その他補助装置について
など様々な点について決定していきます。
治療計画が完成したら、コンピュータで歯の移動やゴールのシミュレーションを見ることができます。シミュレーションでは歯の動いていく様子やアタッチメントやリンガルボタンなどの補助装置の位置なども全て確認することができます。シミュレーションは複数作成することができ、例えば抜歯あり・抜歯なしのシミュレーションを両方確認して比較検討することも可能です。このシミュレーション患者様と歯科医師とで治療のイメージを共有し、細かい調整やご要望があれば反映させて最終的な治療計画を完成させていきます。
治療計画が決定したらクリンチェック上で承認と発注処理を行いアライナーの作成に入ります。アライナーはアライン社のもつ海外の工場でつくられますので発注元の医院に届くまでには2〜3週間ほどかかります。
アライナーが届いたら、患者様には医院に来院していただきます。治療計画に基づいた抜歯・IPR・アタッチメント付与などの処置が行われ、アライナーの装着方法や注意点などが説明されます。治療開始直後は患者様自身が取り扱いに慣れていないため、少なめの枚数のアライナーをお渡しして早めに一度ご来院していただくことも多いです。
アライナーの取り扱いに問題がなさそうであれば数ヶ月分のアライナーを一気にお渡しすることもあり、その場合は数ヶ月に一度の定期検診となります。定期検診はアライナーのフィット具合を確かめたり、追加の処置を加えたり、治療計画のズレが生じてないかを確かめたりすることのできる非常に重要な機会です。必ず、歯科医師に指定された時期に定期検診を受けるようにしましょう。
歯にトラブルが生じたり、治療計画とのズレが生じたりした場合は治療計画の修正が必要となります。再度口腔内のスキャンを行いクリンチェック上で治療計画を立て直します。全顎的な矯正治療の場合は歯を動かす量が多いため、ズレが生じやすくなります。そのため再スキャン→治療計画の修正→追加アライナーの作製を何度か繰り返すこともあります。
全てのアライナーを終了し、希望の歯並びを手に入れることができたら治療終了となります。アタッチメントやリンガルボタンなどの装置は全て綺麗に外し、保定装置を作るためのスキャンを行います。保定とは、歯並びが後戻りしてしまわないように固定するための処置です。インビザラインではアライナーと同じような仕様のビベラリテーナーを使用して保定を行うのが一般的です。保定期間は初めの半年ほどは一日中リテーナーを装着していただき(アライナー使用時と同じ)、その後は夜間のみ装着していただくのが理想的です。
インビザラインは新しい矯正治療方法なのでまだ導入している医院が限られています。MeLoSではクリンチェック上で治療計画を立てられる歯科医院様をご紹介することができます。また、インビザラインに対するご不安やご心配に対しても専門のスタッフが患者様のお口の中の状況をお聞きした上でご相談に乗ることができます。インビザラインに興味があるけどどこで相談すればいいかわからない、とお悩みの方はまず1度MeLoSにご相談ください。ご質問にお答えした上で適切な歯科医院様をご紹介いたします。