インビザライン矯正とは少しずつ形の異なる透明のマウスピース(これをアライナーと呼びます)を交換することで歯を動かしていく近年人気の歯列矯正治療です。
インビザライン矯正ではアライナーを使用する以外に歯に処置を加えることが度々あります。この記事では処置の一つであるIPRについて詳しくご説明いたします。
インビザライン矯正ではIPR(InterProximal Reduction)もしくはディスキングと呼ばれる、歯を削る処置を行うことがあります。歯を削るというと虫歯治療の様子を思い浮かべる方が多いかと思いますが、IPRは虫歯治療のように大きく歯を削るわけではありません。
ヤスリのような器具や専用の細いバーを使用して、歯と歯が隣り合っている部分の表面を0.1〜0.5mmほど削ります。0.1〜0.5mmというのは両側を合わせての厚さですので片側は0.05〜0.25mmのわずかな量になります。歯の一番表層にあるエナメル質は約2mmあり、IPRで削る部分はこの層におさまります。エナメル質には神経は通っておらず、痛みを感じないのでIPRの処置を行っても強い痛みが出ることはありません。
インビザラインではなぜIPRを行う必要があるのでしょうか。IPRを行う目的についてご説明いたします。
IPRを行う目的として最も多く挙げられるのが「歯が並ぶスペースを確保するため」です。歯が重なり合って並んでいる叢生と呼ばれる歯並びや出っ歯の方は、顎のサイズに対して歯のサイズが大きいために歯が並ぶスペースが不足しています。
IPRでは歯と歯の隣接面を削って隙間を開けることで、スペースを確保することができます。複数箇所にIPRを行うことで数mmのスペースを作り出すことができるので、軽度の叢生や出っ歯の場合はIPRとアライナーのみで歯並びを改善できる場合もあります。中程度以上の場合には抜歯、側方拡大、遠心移動など他の方法と組み合わせて十分なスペースを作り出します。
歯の大きさや形には個人差があり、同じ歯種でも左右で大きさや形に違いがあることがあります。その場合、ただ歯を綺麗に並べただけでは理想の見た目にならなかったり噛み合わせがうまくいかなかったりします。左右の歯の大きさや形の差が少ない場合はIPRで歯の大きさや形を整えてあげることで、よりきれいな見た目と噛み合わせを獲得することができます。
ブラックトライアングルとは歯の隣接部分と歯肉に囲まれた部分に出来る黒い三角のように見える隙間のことです。特に前歯の方は歯の形態的にブラックトライアングルを形成しやすく、目立ちやすくなっています。矯正治療を行うと密に重なり合っていた歯並びが解消されて綺麗に並ぶことでブラックトライアングルが目立つようになってしまうことがあります。このような場合に歯の隣接部分を少し削って歯を寄せることで、このブラックトライアングルを解消することができます。
IPRは歯を削る処置なので抵抗のある方もいらっしゃるかもしれません。IPRを行うと矯正治療にどのようなメリットがあるのでしょうか。考えられるメリットのうち代表的なものをご説明いたします。
歯はもともと隣の歯と点で接しています。しかしIPRをおこなって歯並びを整えると歯の隣接部分を削るため接する部分が面になります。点より面のほうが接している部分が大きくなるため矯正終了後に歯並びが崩れにくく、後戻りするリスクを減らすことができます。特に歯の小さな前歯の部分では後戻りも起こりやすく目立ちやすいため、後戻りのリスクを減らすことのできるIPRは有効な処置と考えられます。
矯正では便宜抜歯といって歯を並べるスペースの確保のために健康な歯を抜歯することがあります。IPRを行う最大のメリットはIPRを行うことで、この便宜抜歯を回避することができる可能性があることです。歯が重なって生えている叢生と呼ばれる歯並びや、出っ歯は歯が並ぶスペースの不足によって起こります。
叢生や出っ歯の程度が軽度であればIPRを複数箇所に行ってスペースを作り出し、並べることで歯並びを綺麗に整えることができます。便宜抜歯はできればしたくない……と思っていらっしゃる方も多いと思います。抜歯に抵抗のある方にとってIPRは大きなメリットになると考えられます。
歯の形やサイズのせいで、歯を綺麗に並べても見た目が理想通りにならないことがあります。その場合には、IPRで歯のバランスを整えることで見た目の仕上がりがよくなります。審美面だけでなく、機能面でもIPRを少し入れることでグッと噛み合わせがよくなることもあります。
また、IPRをせずに歯列を広げながら無理やり歯を並べることで、想像していた仕上がりより歯の突出感が気になる仕上がりになってしまうこともあります。IPRを適切に取り入れることで美しい歯並びを手に入れやすくなります。
一つ前の項目ではIPRのメリットについてご説明いたしました。ではデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。考えられるデメリットのうち代表的なものについてご説明いたします。
両側で0.1〜0.5mm、片側で0.05〜0.25mmとわずかではありますがそれでも歯を削る処置であることに変わりありません。2mmほどあるエナメル質に対して削る量はわずかであるため、IPRによって歯の健康を害することはほとんどありませんが、今まで虫歯などで削ったことのない部分を削ることに抵抗はあるかもしれません。また、敏感な方は器具で削るときに圧迫感や不快感を強く感じたり、一時的に滲みる症状が出たりすることがあります。その場合はIPRを行うタイミングを数回に分けることも可能なので、担当歯科医師に相談してみましょう。
また、既に被せ物や詰め物をしている歯がある場合はIPRをその歯に設定することで健康な部分を削る量を減らせることもあります。こちらも治療計画を立てる時に相談してみると良いでしょう。
IPRは最大で5mm程度しかスペースを確保することができません。そのため重度の叢生や出っ歯でそれ以上のスペースが必要な場合にはIPRのみで歯並びを綺麗にすることは難しくなります。5mm以上確保したい場合には他の処置とIPRを組み合わせて矯正を進めていく必要があり、大きく口元の改善を望まれる場合は抜歯が必要なことが多くなります。
インビザラインでは治療開始前にコンピュータ上で様々なパターンの治療計画を立てて、動きとゴールを確認することができます。IPRのみの場合と抜歯を組み合わせた場合の両方の治療計画をよく確認し、それぞれの計画のメリット・デメリットを理解した上で治療を開始することが大切です。
被せ物や詰め物の部分を削る場合は問題ありませんが健康な歯の隣接面を削る際はエナメル質を傷つけることになります。削った部分はできるだけツルツルになるよう処置を行いますが、どうしても少し表面が粗造な状態になるため、通常のエナメル質より汚れが溜まりやすくなってしまいます。そのためIPRを行った部分はフロスやフッ素入り歯磨き粉で十分にケアすることが大切です。
また、IPRは歯の根元まで器具を入れることが多いので、使用するヤスリやディスク、バーで歯茎を傷つけて痛みを感じるリスクがあります。このときの傷はほんのわずかで出血もごく微量ですが、痛みを感じる際はすぐに歯科医師に伝えるようにしましょう。
インビザラインでIPRは頻繁に行われる処置です。先ほどもご説明した通り、IPRの最大の目的は歯を並べるスペースを確保することです。すきっ歯やごく軽度の乱れである場合にはIPRでスペースを作り出す必要はありません。
しかし、歯を並べるスペースが足りない場合はIPRを提案される可能性は高いと考えられます。歯の健康に大きな影響はないといえど、健康な歯を何ヶ所も削ることに抵抗を感じる方もいらっしゃると思います。どうしても歯を削りたくないという方は側方拡大や遠心移動といった他の方法でカバーすることができる場合もあります。インビザライン矯正ではさまざまな治療パターンをシミュレーションすることができるので担当歯科医師とよく相談して治療方針を決めていきましょう。
この記事ではIPRについて詳しくご説明してきました。ご自身の矯正治療にIPRが必要なのかは多くの方が気になるポイントだと思います。しかし、IPRが必要かどうか、どのくらい必要なのか、という点に関しては歯科医師がお口の中を診ることでしか判断することはできません。IPRが必要な歯並びなのか知りたい、という方はぜひMeLoSにご相談ください。
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