MeLoS認定アライナー矯正教育担当講師。長崎大学歯学部卒業、東京医科歯科大学病院総合診療科にて研修後、複数の歯科医院で勤務しインビザライン矯正やインプラント、口腔外科分野を含む各種治療経験を豊富にもつ。歯科医師むけ専門書の翻訳なども行う。
インビザラインとは少しずつ形の異なる透明のマウスピース（これをアライナーと呼びます）を交換することで歯を動かしていく近年人気の歯列矯正治療です。
通常はアライナーを７〜１０日周期で交換していくことで歯並びを改善していきますが、この周期を早めることのできる加速装置と呼ばれるものがあるのをご存知でしょうか。
この記事では加速装置とはどのようなものであるか、メリット・デメリットなどについて詳しくご説明いたします。
インビザライン矯正では一枚のアライナーを約７〜１０日連続で使用することで歯を少しずつ動かしていきます。全顎矯正では使用するアライナーは何十枚にもおよぶため治療期間が約２年と長くなっており、治療期間の長さで矯正開始に踏み出せない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
矯正では歯に力をかけて動かしていくわけですが、この力は強ければいいというわけではありません。強すぎると歯に過度なダメージを与えてしまい、最悪の場合は神経が死んでしまったりグラグラと揺れてしまったりするトラブルに繋がります。歯に適切な力をかけることで、力をかけた歯の周囲の骨が吸収→再生を繰り返して歯を動かしていきます。
加速装置とは光（近赤外線）を口腔内に当てることで細胞を活性化させ、この「吸収と再生」のサイクルを早めることができる装置です。サイクルを早めることで歯の動きが早くなりアライナーの交換周期を短くすることができます。治療期間がネックに感じていた患者様にとっては非常に便利な装置と考えられます。
加速装置はインビザライン矯正を行う方にとって非常に便利な装置ですが、デメリットもあります。インビザライン矯正を行っている方の中でもこの装置を使用している方は一部です。装置を希望する場合はデメリットをよく理解した上で使用するようにしましょう。
そもそも矯正治療は健康保険の適用とならない自費診療です。インビザライン矯正では基本の治療費として部分矯正で３０〜６０万円ほど、全顎矯正で８０〜１００万円ほどの治療費がかかりますが加速装置を使用する場合はその基本費用に加えて、装置代が１０〜１５万円ほどかかります。
矯正治療にかかる費用がさらに高額になってしまうことはデメリットの一つだと考えられるでしょう。歯科医院によっては治療に高額な費用がかかる場合、デンタルローンやカードの分割払いに対応しているところもあります。加速装置を使用してみたいけど費用がネックに感じる方は支払い方法を歯科医院で相談してみましょう。
加速装置は患者様ご自身で管理してご自宅で毎日使用していただきます。歯科医院で専門のスタッフのもと行う処置とは異なり、操作方法には多少の慣れが必要なため、使用を始めたばかりの時期はうまく使えているのか不安になりやすいです。
また、歯を動かすスピードが上がっているので、歯の動きにズレが生じている場合はそのズレが大きくなるスピードも早いです。ズレたままどんどん矯正が進んでいくのを防ぐために、通院頻度をあげてチェックを行うことが必要になります。
加速装置を使用している方は使用していない方に比べて通院頻度が多くなります。
加速装置には現在オルソパルスとPBMヒーリングと呼ばれる２つの種類がありますがどちらも日本では医療機器として認可されていません。それぞれアメリカやカナダ、EUなどでは安全性が認められているものですので、使用方法を守っていれば副作用を心配するようなものではありませんが、何かトラブルが起きるのではないかとご不安に感じる方もいらっしゃいます。日本の薬機法で認可されていない器具を使用するのに抵抗がある方には不向きかもしれません。
加速装置を使用するデメリットについてご説明してきましたが、メリットはどのようなものがあるのでしょうか。インビザライン矯正で加速装置を使用するメリットについて代表的なものをご説明いたします。
インビザラインは従来のワイヤー矯正に比べて痛みの少ない矯正方法ですが、やはり新しいアライナーに交換した直後の２、３日は痛みを感じやすいです。加速装置では低量の近赤外線光を口腔内に照射しますが、この光は細胞を活性化させて炎症を抑制し、痛みを軽減させることができます。加速装置を使用するとアライナー交換が頻繁に行われますが、新しいマウスピースにした時のキツさや締め付け感が緩和されるので不快感を減らしながらインビザライン矯正の進みを早めることができます。
加速装置を使用する上での最大のメリットがこちらの「治療期間の短縮」です。通常インビザライン矯正は「７〜１０日×アライナーの枚数」の治療期間がかかりますので、部分矯正でも約半年、全顎矯正で約２年ほどかけて治療していくことになります。
特に、結婚式のような大事なイベントが決まっている方は、できるだけその日までに矯正治療を完了しておきたいはずです。加速装置を使用することでアライナーの交換周期は約４日になりますので全体の治療期間も、使用しない場合の６割ほどの期間に短縮することができます。
歯並びを大きく動かす場合は、その分矯正期間が長くなりがちですが、加速装置を使用すると大幅に期間を短縮できます。
通常１枚のアライナーを連続で７〜１０日使用します。アライナーは歯磨きをした後の綺麗な状態で装着するため、激しく汚れることはほとんどありませんが、それでも使用期間の後半になると衛生面で気になってくることがあります。加速装置を使用すると交換周期が短くなるため、その分アライナーを清潔な状態に保ちやすいです。インビザライン矯正治療中はどうしても虫歯や歯周病になるリスクが高くなりますが、アライナーを清潔に保つことで口腔内環境にもメリットがあります。
加速装置にはオルソパルスとPBMヒーリングの二種類があります。
これらの簡単な使用方法をご紹介いたします。
まずは充電をしましょう。充電ができたことを確認したら唇と上の前歯の間に装置を置きます。装置を優しく歯で噛んでください。このとき装置を強く噛み締めないように注意しましょう。装置が作動している間は少し暖かさを感じます。照射が完了したら装置をひっくり返して下顎も同じように照射を行います。照射時間はオルソパルスは上下で１０分（片側５分）PBMヒーリングは上下で８分（片側４分）です。終わったら温水で洗浄して自然乾燥させ保管しましょう。装置を洗浄する際に研磨剤や歯ブラシを使うと装置に傷がついて衛生的に使用できなくなりますので、使用は控えるようにしましょう。
加速装置は使い方も簡単で非常に便利です。しかし使用するにあたって気をつけなければならない点もあります。注意点をきちんと守って加速装置の効果を最大限に発揮させましょう。
いくら加速装置を使用しているからといってアライナーの装着時間を短くしていいわけではありません。インビザライン矯正を成功させるために最も大切なのはアライナーの装着時間を守ることです。アライナーの使用時間が短いまま進めていくと、治療計画とズレが出てきます。
その状態で加速装置を使用するとアライナーとのズレがさらに広がっていってしまい、追加の治療計画が必要になる可能性があります。アライナーの装着時間を守った上で加速装置を使用するよう気をつけましょう。
加速装置は体に作用を及ぼす機器ですので使用方法を正しく守りましょう。そして加速装置の装着時間を守ることも大切です。片顎ごとに４分または5分の短い装着時間ですが、これを毎日守って継続することで効果を発揮します。
加速装置は数日間連続で使用して効果を発揮します。間を開けてしまうとやり直しになってしまいますので、毎日続けて使用できるように工夫しましょう。使用したいと思った時に充電がされていないと使用できない日ができてしまいます。充電を忘れないようにすることも重要です。また、加速装置はお口の中に入れて使用しますので、衛生面を保てるよう、メーカーの推奨する方法でお手入れを行いましょう。
加速装置を使用していて何かトラブルが起きた時はすぐに歯科医に報告しましょう。装置の故障などのトラブルだけでなく、お口の中にトラブルが起きた時も同様です。
特に加速装置の使用中にアライナーとのズレが起きるとそのズレが大きくなりやすいと考えられます。早期にトラブルに気付くことができればリカバリーも最小限で済みます。
加速装置は追加費用もかかるため、使用するかどうかは慎重に考えたいという方が多いと思います。ご自身の矯正治療にどのくらい期間がかかるのか、加速装置を使用することでどのくらいメリットがありそうかなど、加速装置を使用したインビザライン矯正についてご質問やご不安がある方はぜひMeLoSにご相談ください。
専門のスタッフが患者様のお口の中の状況をお伺いした上でご相談に応じます。また、お近くのインビザライン矯正を受けられる提携クリニックのご紹介も可能です。初回相談は無料ですので、お気軽にLINEよりご連絡ください。
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