MeLoS認定アライナー矯正教育担当講師。長崎大学歯学部卒業、東京医科歯科大学病院総合診療科にて研修後、複数の歯科医院で勤務しインビザライン矯正やインプラント、口腔外科分野を含む各種治療経験を豊富にもつ。歯科医師むけ専門書の翻訳なども行う。
インビザラインは少しずつ形の異なる透明のマウスピース（これをアライナーと呼びます）を交換していきながら歯並びを整えていく、近年人気のある矯正方法です。一般的には矯正治療は上下同時に行っている人が多いですが、人によっては上の歯並びのみがなおしたい！という方もいらっしゃると思います。そのような場合、上の歯のみインビザライン矯正で治療を行うことはできるのでしょうか。この記事ではインビザラインで上だけ矯正できるのか、その際の注意点にはどのようなものがあるのかなど詳しくご説明していきます。
インビザラインで上の歯のみを矯正することは可能なのでしょうか。結論からお伝えすると上だけの矯正は可能です。しかし本来、矯正治療は見た目だけでなく噛み合わせも含めて整えるための治療方法です。上だけの矯正では噛み合わせを整えることはできないため、適応されるケースは非常に限られてしまいます。もし希望される場合は、ご自身の歯並びが上だけで矯正が行えるケースかどうか歯科医院で精査し、デメリットを理解した上で矯正治療をはじめるようにしましょう。
インビザラインで上だけの矯正が適応となる歯並びはどのようなものなのでしょうか。具体例に分けてご説明いたします。
軽度のすきっ歯、特に前歯に限局したすきっ歯である場合は適応になる可能性が高いです。すきっ歯は歯を並べるためのスペースは余っている状態なので、抜歯を行う必要がありません。わずかなスペースを閉じるだけであれば噛み合わせにも影響しないため、上だけのインビザライン矯正で治せる可能性が高いです。
出っ歯も奥歯の噛み合わせが整っていて前歯のみの軽度のものであれば、上だけのインビザライン矯正が適応になる可能性があります。突出している歯を内側に引っ込めるために歯と歯の間をわずかに削るIPRという処置を行い、IPRで出来たスペースに歯を並べます。矯正後の後戻りなどで少し歯が出っ歯になってしまったという方にも適しています。
叢生とはガタガタの歯並びのことを指します。奥歯の噛み合わせは整っているが前歯部分にわずかなガタつきがある場合に、上のみのインビザライン矯正が適応になることがあります。ガタガタの歯並びをまっすぐにならべるためにIPRを行うか、歯列をやや前方に広げて歯を並べます。こちらも矯正後の後戻りでややがたつきが気になるようになってしまった方は適応になることが多いです。
では、インビザラインで上だけ矯正ができない歯並びにはどのようなものがあるのでしょうか。適応とならない歯並びについてご紹介いたします。
歯に対して顎のサイズが小さく、歯をきれいに並べるために抜歯が必要となるケースでは上だけの矯正治療を行うことはできません。抜歯を行った矯正治療では奥歯も含めた歯列全体を大きく動かすことになり、必ず噛み合わせが変わるため下の歯も動かす必要があります。抜歯が必要とされる歯並びには重度の出歯、重度の叢生などがあります。
抜歯が必要でなくても奥歯がうまく噛み合っていないケースもあります。噛み合わせを整えるためには上下の歯を適切な位置に動かす必要があります。ご自身では噛み合わせが気になっていないからといって、上のみの矯正治療を無理やり行うと、後戻りの原因となったりさらに悪化したりする原因となったりしますのでお勧めすることはできません。
重度の叢生、出っ歯、受け口、オーバーバイト、開口の方は奥歯の噛み合わせも整えなければなおすことができないため、上だけのインビザライン矯正は行うことができません。これらの歯並びの方は抜歯・IPR・遠心移動（奥歯を順に後ろにおくってスペースをつくること）・側方拡大（歯列を拡大してスペースをつくること）を併用して全顎矯正を行うことになります。
インビザラインの上だけ矯正は適応範囲が狭く、誰にでもおすすめすることはできませんが、その中でも上だけ矯正がおすすめだと考えられるケースをご紹介いたします。
インビザラインにかかる費用を少しでも抑えたい方は上だけの矯正を考えてみてもいいでしょう。上だけの矯正を行うのであれば全額矯正よりも数万〜数十万安い費用で気になる点だけをピンポイントで直すことができます。インビザライン矯正を希望される方の中には他の歯科治療を行うための費用も確保したいという方もいらっしゃるかと思います。そのような場合、上だけの矯正をすることで最もお困りの点を解消する、という方法が有効になることがあるかもしれません。
上だけのインビザライン矯正では噛み合わせの調整がいらないため比較的短期間で歯並びを整えることができます。結婚式や面接など、大きなライフイベントが控えていてタイムリミットのある方は、上だけの矯正で見た目だけを整える……というのも一つの手です。しかし、奥歯の噛み合わせが整っていない場合はやはり全顎矯正がおすすめであることに変わりはありません。
上だけの矯正治療を行う場合、考えられるデメリットがいくつかあります。このデメリットもよく考慮した上で治療方針を決めるようにしましょう。
上だけの矯正を行った結果、噛み合わせが合わなくなる可能性があります。上の歯だけを動かしたことで上下の噛み合わせに変化が生じ、元々そんなに気になってなかった噛み合わせがさらに悪化してしまうこともあります。噛み合わせが悪くなると一部の歯に負担がかかりダメになってしまったり、食事や会話に影響を及ぼすだけでなく、顎の痛みや肩こり、頭痛を引き起こす要因にもなります。上の歯だけのインビザライン矯正を行う場合は、矯正後の噛み合わせについてしっかりフォローしてもらえる歯科医院で行うことが大切です。
上の歯だけを動かし、噛み合わせを整えなかった場合、お顔周りの筋肉や下の使い方に変化が生じて顔のバランスが悪くなってしまうことがあります。例えば、左が噛みにくいので右でずっと食事している場合には右の顎周りの筋肉が発達してしまい、左右のバランスが悪くなります。そのような事態を引き起こさないためにも、噛み合わせを整えることも必要だと診断された場合にはしっかり全顎矯正で治療を行うことが大切です。
実際にインビザラインの上だけ矯正にかかる費用や期間はいくらくらいになるのでしょうか。MeLoSの加盟医院の料金を元にご説明いたします。
インビザラインの上だけ矯正を行った場合、２５万円〜４０万円ほどになります。全顎矯正であれば８０万円〜１００万円ほどになるため費用はかなり抑えられています。ちなみに、従来のワイヤー矯正で上だけ矯正を行った場合は、３０万円〜５０万円ほどになります。これらの料金はあくまで参考で歯並びの程度によっても異なりますし、医院によっても異なります。上だけ矯正を希望している方は、医院に直接お尋ねいただくことをお勧めいたします。
矯正治療で最も時間がかかるのは、奥歯の移動と噛み合わせの調整です。上だけ矯正を行う場合には、大幅に奥歯を動かしたり噛み合わせを整えたりすることはありませんので、比較的短期間で治療が終了します。多くの場合が３ヶ月〜１２ヶ月ほどで保定期間（歯並びが後戻りしないように固定するための期間）に移行します。
この記事ではインビザラインで上だけ矯正をすることについて詳しくご説明してきました。インビザラインで上だけ矯正を行うには、患者様ご自身の歯並びが適応するケースであるかどうかと、デメリットをご理解いただけているかがポイントとなってきます。ご自身の歯並びが上だけ矯正の適応になるのか、全顎矯正を行った場合とどう異なったゴールになるのか、など詳しく知りたい方はぜひMeLoSにご相談ください。初回のご相談は無料です。矯正治療に精通したスタッフが矯正に関する疑問や不安をお聞きしてお答えいたします。
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