インビザラインとは、少しずつ形の違う透明のマウスピースを周期的に交換していくことで理想の歯並びに近づけていく矯正方法です。目立ちにくく、違和感も少ないため近年人気を集めている歯列矯正治療の方法です。しかし、「インビザラインが気になっているけど自分には歯ぎしり癖があるから治療はむずかしいかも…」と考えてらっしゃる方もいるのではないでしょうか。この記事ではそもそも歯ぎしりとはなんなのか、歯ぎしりがインビザラインに影響を与えるのか、などについて詳しくご説明していきます。
歯ぎしりとはブラキシズムとも呼ばれ、睡眠中や無意識下で歯と歯をすり合わせることです。歯ぎしりにも種類があり、上下の歯をぎりぎりと擦り合わせるものをグライディング、カチカチと合わせるものをタッピングと言います。また、歯ぎしりと似た症状で食いしばりと呼ばれるものもあり、食いしばりは上下の歯をグッと噛み締める動きのことを指します。これらは無意識のうちに行っているため自覚のある方は少なく、多くの場合歯のすり減りや骨の形などを歯科医院で指摘されたり、家族や友人に歯ぎしり・食いしばり行動を指摘されて気づきます。
では、歯ぎしりや食いしばり癖があるとインビザラインで矯正を行う時にどう影響を及ぼすのでしょうか。歯ぎしりが与える影響は様々ですが、ここでは及ぼす可能性の大きなものを取り上げて詳しくご説明していきます。
インビザラインでは特殊な加工を施したプラスチック製のアライナーを使用します。歯とプラスチックではプラスチックの方が柔らかいため歯ぎしりをしているとだんだんアライナーが削れてきます。その結果アライナーが破損してしまうことがあります。また、歯ぎしりや食いしばりでは過剰な咬合力がかかることがわかっていて、体重の約2倍の力がかかると言われています。この過剰な力のせいでアライナーの破損や変形を引き起こすことがあります。破損や変形を起こすとアライナーが口腔内の粘膜を傷つけたり、歯に不必要な負担をかけることがありますので注意が必要です。
歯ぎしりや食いしばりがひどいと歯の移動が妨げられて治療計画に遅れが出ることがあります。インビザラインではアライナーが歯に適切な力をかけて少しずつ移動させていくように設計されていますが歯ぎしり・食いしばりで過度な力が長時間加わることでアライナーが効果的に力をかけることできず治療計画通りの移動が妨げられる可能性があります。歯ぎしり・食いしばり癖を持つ方は通常よりも短いスパンで経過を見ていくことが重要になります。歯が計画通り動いていない場合、アライナーをつける期間を伸ばす、治療計画を変更する、習癖を減らすための生活を送る、などの対応をしなければなりません。歯が治療計画通りに動いているかを確認するために歯科医院での定期受診を怠らず、歯科医師とコミュニケーションをしっかり取りながら治療を進めていくことが大切です。
歯ぎしり・食いしばり癖によって歯の移動が妨げられる状態が続くと理想の歯並びが得られないことがあります。本来、お食事の際以外は上下の歯が合わさることはありません。インビザライン矯正中はお食事以外で歯にアライナー以外の力がかからないことが前提ですので歯ぎしりや食いしばりでアライナー以外の力がかかる時間が長いと予期せぬ歯の移動の妨げや損傷が起こり、治療計画の変更・治療期間の延長・妥協的なゴールの選択を余儀なくされることがあります。治療を始めてから後悔しないように歯ぎしり・食いしばりを指摘されたことがある方や自覚のある方は治療開始前によく担当歯科医師と方針について相談を行い、できる限りの対策を行うことが大切です。
上でもご説明した通り、歯ぎしりによってアライナーが破損してしまう可能性があります。万が一破損してしまった場合はどのような対処を行うべきでしょうか。アライナーが破損したときまず第一に行って欲しいことは担当歯科医師への連絡と受診です。破損部分の大きさやアライナーの残り使用期間によっては、応急的に破損部分を修理する処置を行ったり破損したまま使用する指示を出したりすることがあります。破損・変形の程度が大きく修理が難しいと判断した場合は再度スキャンを行い新しくアライナーを作り直すこともあります。患者様に絶対に避けていただきたいのは自己判断での使用継続と修理です。インビザラインのアライナーは治療計画に沿って非常に精密に設計されています。少しのズレが大きく治療計画に関わって来ることがありますので、必ず担当歯科医師の受診を最初に行うようにしましょう。
歯ぎしりはインビザライン矯正にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があることがわかりました。では歯ぎしり・食いしばりを少しでも改善する方法はないのでしょうか。無意識下で行われることですので完全に習癖を取り除くことは難しいですが、改善させるためにできることがありますので歯ぎしり食いしばりの習癖がある方は普段の生活に少しずつ取り入れていくことがお勧めです。
歯ぎしりや食いしばりにはナイトガードの使用が効果的です。ナイトガードを夜間に装着することによって歯の負担を軽減することができたり上下の歯が当たってすり減るのを物理的に防ぐことができたりします。しかしナイトガードとインビザラインのアライナーを同時に装着することはできません。そのためナイトガードを希望する方はインビザラインの矯正が終わった後に担当歯科医師に相談して作製してもらうようにしてください。保険適用で作ることができますが矯正専門の歯科医院では対応していないこともありますので事前に問い合わせて見ることをお勧めいたします。
歯ぎしりや食いしばりが強い方は顔周りの筋肉が強張っていることが多いです。そんな時はマッサージを行って筋肉の緊張をほぐすことが有効です。特にエラの少し前方にある咬筋やこめかみの上にある側頭筋は歯ぎしり・食いしばりをした後にこわばりやすい筋肉です。張りやだるさを感じるときは特に、ホットタオルなどで温めたりしながら優しく指でマッサージを行いましょう。マッサージをする時はいた気持ちいい程度の強さで行うようにしましょう。
日中、仕事や勉強に集中している時も歯ぎしりや食いしばりが起きやすいです。日中は自分が歯ぎしりをしていることに気づくことができれば止めることができます。デスクや部屋の壁のようなふとした時に目に入りやすいところにメモを貼り付け、普段から癖が出ていないか意識するようにしましょう。日中歯ぎしり・食いしばりをしていることに気づいたときに歯と歯を離すようにするだけで歯に負担をかける頻度をかなり減らすことができます。また、舌の先端を上の前歯の裏の歯茎にあてることで上下の歯に空間をつくることができます。舌の位置を正しい位置におくことを意識するだけで改善が期待できます。
日常生活でストレスが溜まると睡眠中に歯ぎしりや食いしばりを誘発しやすくなります。ストレスを強く感じたら溜め込む前にストレス発散を心がけるようにしましょう。仕事や家事、勉強などで忙しくてなかなかストレス発散の時間が取れないという方は、深呼吸をしたり湯船につかって体を温めたりするだけでもいいでしょう。リラックスした状態で就寝できるよう工夫してみましょう。
過度な飲酒や運動は交感神経が優位になり体が興奮した状態にしてしまいます。歯ぎしりや食いしばりはその交感神経が優位な状態で起きますので、習癖に自覚のある方は控えるようにしましょう。飲酒や激しい運動をした後は副交感神経を優位にするためにできるだけリラックスできる工夫を取り入れてから就寝するようにしましょう。適度な運動はストレス発散になりますのでご自身で心地よいと感じられるものは取り入れましょう。
この記事ではインビザライン矯正と歯ぎしりについて詳しくご説明してきました。以前歯ぎしり癖を指摘されたことがある、歯ぎしり癖を自覚している、など歯ぎしり癖があるからインビザラインができるか不安……と感じていらっしゃる方はぜひMeLoSにご相談ください。患者様の状況をお聞きしてご不安やご心配のご相談に乗らせていただきます。