インビザラインで親知らずの抜歯は必要?デメリットやタイミングなど
2025年9月30日 インビザライン

この記事を監修した人

MeLoS認定アライナー矯正教育担当講師。長崎大学歯学部卒業、東京医科歯科大学病院総合診療科にて研修後、複数の歯科医院で勤務しインビザライン矯正やインプラント、口腔外科分野を含む各種治療経験を豊富にもつ。歯科医師むけ専門書の翻訳なども行う。

インビザラインは少しずつ形の違う透明のマウスピースを交換しながら理想の歯並びへと動かしていく、近年人気の矯正方法です。インビザラインのご相談を受ける時によく聞かれるのが「親知らずを抜かなければならないか」というご質問です。この記事ではインビザライン矯正を行う際に親知らずの抜歯は必要なのかについて説明いたします。また親知らずを抜歯した際のメリットとデメリットについてもお答えしていきます。

 

インビザラインをするなら親知らずの抜歯が必要って本当?

インビザライン をするなら親知らずを抜歯しなければいけないらしい!と聞いたんだけどそれって本当?絶対にしなければいけないの?と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。結論からお伝えすると、インビザライン 治療を始めるからといってかならずしも親知らずの抜歯をしなければいけないというわけではありません。親知らずを抜かなければいけないかどうかは親知らずの状態、全体的な歯並び、目指したい口元などによって変わってきます。絶対に抜歯したくない!と考えている方は抜歯の有無で治療方針にどのような違いがあるのか担当医とよく相談してみましょう。

 

インビザラインで親知らず抜歯が必要なケース

では、インビザラインで親知らずの抜歯が必要となるケースにはどのようなものがあるのでしょうか。なぜ必要なのかということも併せて具体的なケースごとにご説明していきます。

 

親知らずが虫歯になっている場合

親知らずは歯列の一番奥に生えている歯ですので磨きにくく、またご自身でも歯の状態を確認しづらい歯です。そのためきちんと歯磨きをしているつもりでも知らず知らずのうちに虫歯が進行している場合があります。歯ブラシが届きにくいのと同様に治療用の器具も届きにくいため、親知らずが虫歯になるとけずって治療することは困難です。仮に治療をなんとかしたとしても再度虫歯になり痛みが出る可能性が高いので、状態が悪くなる前に抜歯をおこなうことをご提案することが多いです。

 

親知らずが口内のスペースを圧迫している場合

ガタガタの歯並びや口元の突出感を矯正するためには下の歯列にスペースをつくって並べることが必要です。スペースを作る際に、歯を奥の方に移動させる(これを遠心移動といいます)ことがありますが、親知らずがあると移動させるスペースがなくなり遠心移動を行うことができません。スペースを作る方法には親知らず以外の歯の抜歯や歯と歯の間を少し削る(これをIPRといいます)などの方法もありますが、これらの処置はできるだけ少なく進めたいものです。遠心移動を行うことができればこれらを必要最低限で済ませることができますので、親知らずがスペースを圧迫してしまっている場合は抜歯を行ってスペースを確保します。

 

親知らずの生える向きに問題がある場合

親知らずは隣の歯に頭を向けて斜めや真横に生えてくることもしばしばあります。歯はまっすぐ綺麗に生えてしまえば歯に歯茎がしっかりくっついて汚れが侵入しづらい構造をとることができますが、斜めや真横に生えていると歯の上に歯茎がかぶってしまい前述のような構造をとることができなくなります。その結果、食べかすなどの汚れが歯と歯茎の隙間に侵入し炎症を起こします。

 

また一つ前の歯と親知らずの間にも汚れがたまりやすくなり虫歯の原因にもなります。矯正治療の期間中は唾液による自浄作用が働きづらく炎症や虫歯が起こりやすい環境です。これらの部位はプロの手でも完全に綺麗にすることは困難ですので症状が出る前に抜歯をすることをお勧めしています。また横向きに生えてくることで親知らずの成長とともに歯列全体が押されて歯並びが悪化することもありますのでそのリスクを減らすためにも抜歯をお勧めいたします。

 

インビザラインで親知らず抜歯が不要なケース

ここまで、親知らずの抜歯が必要となるケースについてご説明してきましたが、逆に抜歯が不要なケースもあります。以下でそれらのケースについてそれぞれご説明していきます。

 

親知らずがまだ埋まっている場合

親知らずは永久歯列が完成して数年経ってから生えてくることがほとんどです。そのため矯正治療開始時に親知らずの根っこが形成されていない状態で顎の骨の深い位置に埋まったままの場合は、噛み合わせへの影響はないため無理に抜歯する必要はありません。しかし矯正治療途中や治療終了後に根っこが形成されて生えてくる可能性も十分にあります。その場合は治療の妨げや後戻りの原因とならないように適切な時期を待って抜歯を行うこともあります。定期的な通院を行い、親知らずの状態もプロの目でチェックしてもらうことが必要です。

 

口内のスペースが十分にある場合

すきっ歯のような歯と歯の間にもともと隙間がある歯並びの方はすでにスペースが十分にあるため親知らずを抜歯してスペースを作る必要はありません。またガタガタや出っ歯で歯を並べるのに新たなスペースが必要でも歯列の幅の拡大などで調節可能である場合は抜歯をしなくて済む場合があります。しかしいずれも親知らずがまっすぐ生えていて健康な状態で保てそうな場合に限ります。

 

IPRで対応できる場合

IPRとは歯と歯の隣接面を薄いヤスリのようなもので0.1〜0.5mmほど削ることでスペースを確保する処置です。削る量はごく少量で、痛みを感じない部分に限局しているためこの処置によって歯が痛んだりすることはほとんどありません。複数箇所に処置を行うことで歯列全体で数ミリのスペースを生み出すことができます。

 

軽度のガタガタや出っ歯であれば、親知らずを抜いてスペースを作らなくても、このIPRのみで済むことがあります。インビザラインではどこをどれくらい削る必要があるのか、IPRのみで処置した場合どのようなゴールになるのかをコンピュータ上でシミュレーションし、歯科医師と治療計画を確認してから進めることができるので非常に安心です。

 

インビザライン治療で親知らずを抜くメリット

抜歯というとどうしても「いたい」「大変」などのネガティブなイメージが先行してしまいがちですが、メリットがあるからこそ私たち歯科医師も抜歯のご提案をしています。口腔内環境によってメリットは異なりますが、代表的なものをご紹介いたします。

 

理想の歯並びを手に入れやすい

親知らずを抜歯することで理想の歯並びへと近づけやすくなります。親知らずを抜歯することで歯全体を後ろに動かすことが可能になりますので、治療計画にその動きを取り入れることで「口元をもっとひっこめたい」「他の歯を抜きたくない」「削りたくない」などの希望を叶えやすくなります。親知らずを抜歯せずに進めると、思っていたより口元を引っ込めることができなかったり治療期間が非常に長くかかったりすることがあります。

 

虫歯や歯周病のリスクが下がる

インビザライン矯正治療中はアライナーが歯全体を覆っているため、唾液の緩衝作用や自浄作用が働きにくくなり虫歯や歯周病にかかりやすくなります。親知らずやその周囲は歯ブラシで上手に磨くのが非常に難しい部位で矯正中でなくても虫歯や歯周病にかかりやすい部位ですので、矯正の治療期間中はさらにそのリスクが高まります。矯正治療開始前に親知らずを抜歯することができれば、よりお口の中を綺麗に保ちやすく虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。

 

治療が早く終わる可能性が高くなる

親知らずの形は人によって様々ですが大臼歯の一つですので根も太く動きにくい歯であることが多いです。抜歯を行うことで動きにくい親知らずのコントロールをする必要がなくなるので、抜歯をしないパターンより早く治療が終了できる可能性があります。うまく歯の移動が起こらず何度も治療計画の変更を行ったり、アライナーが浮いてしまったりというようなリスクも減らすことができます。

 

インビザライン治療で親知らずを抜くデメリット

もちろんメリットだけでなくデメリットもあります。あてはまるメリットとデメリットは患者様ごとに異なりますので担当歯科医師とよく相談して両方を理解した上で抜歯の有無を決定するようにしましょう。

 

健康な歯を抜くことになる

すでに虫歯や歯周病にかかっている場合を除いて、生え方が悪かったり他の歯を圧迫している、歯を並べるためにスペースを生み出すという理由で親知らずを抜く場合は健康な歯を抜くことになります。矯正治療のために健康な歯を抜くということに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。

 

抜歯後、数日間痛みが続くことがある

親知らずは大きな歯ですので抜く時に力をかけて抜くことになります。歯科医師は周囲の組織の損傷は最小限になるよう努めますが、それでも抜歯後数日は痛みや腫れがでることがあります。また、人によっては通常よりも強く骨とくっついていたり根っこが曲がっていたりして簡単に抜けないケースもあります。その場合は抜歯するために歯茎を切開したり骨を少しけずったりして抜くのでさらに数日痛みが続く場合があります。

 

治療が長引くケースもある

親知らずと顎の骨に通っている神経の通り道が近い場合、抜歯の影響を受けて一時的に唇や頬の感覚にまひが出ることがあります。その場合はビタミン剤などを処方しながら経過を確認し、多くの場合は数週間〜半年で改善します。その分矯正治療を進めるのも先送りになり治療期間が大幅に延長することも稀にあります。

 

インビザライン治療で親知らずを抜くタイミング

インビザライン矯正を行う際、親知らずを抜くべきかどうか、そして抜くとすればいつが適切なのかは多くの方が気になるポイントです。親知らずは生え方や状態によって歯並びに大きな影響を与えるため、治療計画を立てる上で非常に重要な判断材料となります。ここでは、親知らずを抜歯する一般的なタイミングについて解説します。

 

ほとんどの場合は矯正前に抜歯する

矯正治療を始める前に、親知らずを抜歯することが勧められる場合があります。親知らずは口の一番奥に生えてくるため、スペースが不足して斜めに生えたり、一部だけ歯ぐきから出てきたりすることが多い歯です。そのまま残しておくと、矯正で整えた歯並びを再び乱す原因となったり、歯磨きがしにくく虫歯や歯周病のリスクを高めたりします。

 

また、矯正で奥歯を動かす際に親知らずが邪魔をして治療効果が十分に得られないこともあります。矯正治療をスムーズに進め、治療後の歯並びを長く安定させるためには、事前に親知らずの有無や状態を確認し、必要に応じて抜歯することが重要です。

 

矯正中に抜歯することもある

一方で、親知らずがすでに正常に生えていて問題を起こしていない場合や、治療開始時点で抜歯の必要がないと判断されるケースもあります。その場合でも、矯正中に歯の動きや咬み合わせの変化に伴って親知らずがトラブルを引き起こすことがあり、その際には治療の途中で抜歯が検討されます。

 

例えば、矯正中に親知らずが奥歯を押して歯列が乱れ始めたり、マウスピースの装着に支障をきたす場合です。また、矯正を進める中で清掃が難しくなり、親知らずが虫歯や歯周病を発症するリスクが出てくることもあります。

 

矯正中に抜歯を行う場合は、一時的にマウスピースを使用できない期間が生じる可能性がありますが、多くの場合は治療計画を修正しながら対応可能です。矯正開始前にすべてを決めつけるのではなく、経過を見ながら柔軟に対応していく姿勢も重要です。

 

インビザライン治療で親知らずを抜かないメリット

インビザライン治療では、必ずしもすべての親知らずを抜歯しなければならないわけではありません。生え方や顎のスペース、治療のゴールによっては、親知らずを残したまま矯正を進めることが可能です。

 

抜歯は外科的処置を伴うため、体への負担やリスクが一定程度あるため、抜かない選択ができるケースでは、患者さんにとってのメリットも存在します。ここでは、親知らずを抜かない場合の主なメリットについて解説します。

 

外科処置が必要ない

親知らずを抜かない最大のメリットは、外科的な処置を避けられることです。抜歯は局所麻酔を行い、場合によっては骨を削ったり、歯を割って取り出したりと大掛かりな処置になることもあります。

 

術後は腫れや痛み、出血などが数日続くことも少なくありません。そのため、ある程度の炎症が落ち着くまでは治療も開始することができず、治療開始は遅れます。

 

親知らずを残したまま治療を進められる場合は、こうした身体的な負担や治療スケジュールの遅延を防げるのが大きな利点です。

 

神経を傷つけるリスクを避けられる

下顎の親知らずは、顎の奥にある太い神経(下歯槽神経)に近い位置に生えていることが多く、抜歯の際には神経を損傷するリスクが伴います。神経を直接傷つけることはほとんど考えにくいですが、抜歯時の刺激が原因で、まれに知覚麻痺やしびれが出る可能性もあり、これが患者様にとって不安材料となることもあります。

 

親知らずを抜かない選択をすれば、このような外科処置に伴うリスクを回避でき、安心して矯正治療に取り組めます。特に高齢の方や全身的な健康リスクを抱えている方にとっては、安全性の面で大きなメリットと言えるでしょう。

 

インビザライン治療で親知らずを抜かないデメリット

インビザライン治療で親知らずを抜かない場合には、身体的な負担が少ないというメリットがありますが、一方で矯正治療におけるデメリットも存在します。親知らずの位置や生え方によっては、歯の移動が制限されたり、口腔内の衛生管理が難しくなることがあります。ここでは、親知らずを抜かないことによる主なデメリットについて解説します。

 

歯の動きに制限が生じる

親知らずが正しく生えていない場合や、歯列内のスペースを占有している場合、隣の歯の移動が妨げられることがあります。インビザラインでは、遠心移動と呼ばれる、歯を順番にお口の奥の方に送っていく動きを行うことがあります。この動きを行うことで前歯を引っ込めるスペースを確保したり、奥歯の噛み合わせを整えたりします。

 

しかし、一番奥に親知らずがあると歯を奥に動かすことができず、計画通りの歯列を達成できないことがあります。治療計画立案の時点で奥歯の遠心移動が必要なケースでは、親知らずを抜かないことが矯正効果の妨げになる場合があります。

 

虫歯になりやすくなる

親知らずは奥に位置するため、ブラッシングが難しく汚れが残りやすい部位です。インビザライン装着中は取り外して歯磨きを行うことができますが、親知らずの周囲は磨き残しが発生しやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。また、歯磨きが十分にできない状態で矯正装置を装着すると、歯や歯茎の健康にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、親知らずを抜かない場合は、より丁寧な口腔ケアが求められます。

 

親知らずを抜かない場合のインビザライン治療の方法

親知らずを抜かずにインビザライン矯正を行う場合でも、治療計画を工夫することで歯列全体のバランスを整えることが可能です。ただし、抜歯を前提としたケースと比べると、歯の移動の自由度が制限されるため、治療法や装置の使用方法に注意が必要です。ここでは、親知らずを残したまま行う代表的なインビザライン治療の方法について解説します。

 

IPRを行う

IPR(Interproximal Reduction:歯間削合)は、歯と歯の間をわずかに(0.1〜0.5mm程度)削ってスペースを確保する方法です。親知らずを抜かない場合、奥歯や前歯の移動スペースが不足することがあります。その際にIPRを行うことで、歯列全体をバランスよく整えることが可能です。適切な量を削合することで、歯の健康を保ちながらも計画通りの移動ができます。

 

歯列を拡大させる

歯列拡大は、顎のアーチを広げることで歯を移動させるスペースを確保する方法です。親知らずを残したまま治療する場合、歯列内のスペースが限られることが多いため、拡大装置やマウスピースで歯列を徐々に広げ、歯を並べるスペースを確保します。これにより、親知らずを抜かずとも理想とする歯並びを達成しやすくします。

 

便宜抜歯の検討

親知らずを抜かない場合、歯の後方移動などでスペースを確保することが難しくなります。その場合には便宜抜歯を検討することがあります。便宜抜歯とは、歯を並べるスペースを確保するために健康な歯を便宜的に抜歯する方法です。

 

多くの場合小臼歯と言われる、前から4番目もしくは5番目の歯が対象になります。歯列のなかほどにある歯を一本抜くことでその分歯を並べるためのスペースが確保できますので、遠心移動を行う必要もなく、歯を並べる際の自由度も高まります。

 

ガタガタの歯をきれいに並べたり、前歯を引っ込めることが行いやすくなり、親知らずを抜かずとも患者様の理想の歯並びを追求することが可能になります。

 

インビザラインで親知らずの抜歯が必要か知りたい方は、MeLoSにご相談ください

「矯正治療を開始するには親知らず抜歯が必須」と思っていた方も多いのではないでしょうか。この記事でご説明してきた通り、実はそうとも限らず抜歯を行わずに矯正を行える場合もあります。しかし、お口の中の状況によっては抜歯することで非常に多くのメリットが得られる場合があります。確かに親知らずの抜歯はできれば避けたい方が多いかと思いますが、闇雲に避けるのではなく担当歯科医師と相談してご自身のお口の中の状況に一番ベストである方を選ぶことが大切です。

 

ご自身の矯正治療に親知らずの抜歯が必要かどうか気になる方はぜひお気軽にMeLoSにご相談ください。経験豊富なスタッフがカウンセリングを行いお答えいたします。

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