インビザラインとは、少しずつ形の違う透明のマウスピースを周期的に交換していくことで理想の歯並びに近づけていく矯正方法です。目立ちにくく、違和感も少ないため近年人気を集めている歯列矯正治療の方法です。この記事ではそもそもインビザラインが適応となる歯並びとはどんなものなのか、また適応にならなかった場合は他にどんな方法があるのか、という疑問にお答えしていきます。
インビザラインができない歯並びには具体的にどのようなものがあるのでしょうか。インビザラインが適応にならない症例7つについて以下で解説していきます。
歯が並ぶスペースが足りず、重なり合って生えてでこぼこになってしまっている歯並びを叢生と呼びます。重度なものでは歯を並べるスペースを確保するために歯を数本抜歯して大きく動かすことが必要になります。インビザラインは抜歯矯正も適応になりますが、抜歯したスペースが大きいとそこを埋めるのにたくさんの時間がかかってしまい、治療がうまくいかないことがあります。そのような場合はインビザラインが適応にならない歯並びと言えます。
上顎前突(出っ歯)は上の顎の前歯や顎が前方へと突出している歯並びのことです。唇が閉じにくい・口呼吸になりやすい・見た目が悪い・噛み合わせが悪いなどの不具合で矯正を希望される方が多いです。軽度〜中程度の上顎前突では歯を後ろに送り込むことで解消できることも多いですが、重度の上顎前突では歯並びだけではなく骨格的な異常を伴っていることも多く、この場合は外科的矯正治療の適応となります。しかし骨格的な異常を伴っているかどうかはご自身で判断することは非常に難しいため歯科医院を受診してレントゲンなどで精査することが大切です。外科的矯正が適応の場合は大学病院などにご紹介となります。
下顎前突(受け口)は下の前歯や下の顎が前方へと突出している歯並びのことです。特徴的な顔貌・発音障害・咀嚼しにくい・噛み合わせが悪いなどの不具合が起きるため矯正治療の対象となります。重度の下顎前突の場合、骨格的な異常で上下の顎のサイズがアンバランスなことによるものであることも多く、その場合はインビザラインで歯を動かすだけでは解消せず外科的矯正が必要となります。外科的矯正が必要かどうかは歯科医院での精査が必要となり、適応の場合は大学病院などにご紹介となります。
過蓋咬合とは奥歯を噛み締めた状態で上の前歯が下の前歯に大きく覆いかぶさり、下の歯が全く見えない歯並びのことです。ディープバイトとも呼ばれます。この歯並びでは歯や、顎関節に大きな負担がかかったりします。軽度から中程度のものであればインビザラインで治すことは可能ですが重度のものになると原因が骨格的異常にあるものも多くなります。骨格的異常が原因となる場合は外科的矯正が適応となります。外科的矯正が必要かどうかは歯科医院での精査が必要となり、適応の場合は大学病院などにご紹介となります。
インビザラインではアライナーと呼ばれるマウスピースが歯を掴んで力をかけることで理想の歯並びへと動かしていきます。重度の虫歯では虫歯で歯の大部分が失われていたり脆くなっていたりするためアライナーが歯に十分な力をかけることができません。
歯周病は歯垢の中の細菌が歯の周りの組織に炎症を起こす病気で、進行していくと歯を支えている土台の骨を溶かしていきます。重度の歯周病にかかっている状態で歯に力をかけると歯が抜けてしまう可能性があります。虫歯も歯周病も軽度であれば適切な治療を行ってから矯正治療を行うことは可能ですので、矯正治療を始める前に虫歯や歯周病が無いか精査し、見つかった場合は治療を受けてから始めるようにしましょう。またインビザラインでの矯正治療中は新たに虫歯や歯周病にかかりやすくなっているためフロスや歯間ブラシを使った丁寧なセルフケアを行うようにしましょう。
インプラントは金属製の人工歯根を骨に埋め込み、その上に人工の歯を被せる治療です。人工歯根は顎の骨に直接固定されています。天然の歯は根っこの周りに歯根膜という薄い膜を介して骨にくっついており、この歯根膜が歯にかかる力を感知して、周りの骨を溶かしたり再生したりしながら歯が動いていきます。しかし人工歯根には歯根膜がなく顎の骨に直接、強固にくっついているので矯正治療で力をかけて位置を動かすことはできません。そのためインプラントが入っている部分に関してはインビザラインを含めた全ての矯正治療を行うことができません。どうしても矯正治療を行いたい場合は人工歯根を一度除去して、新しい歯並びに対応した場所に新たに埋入し直すことになります。
埋伏歯とは歯が骨の中に埋まっている歯のことです。半分埋まっているものや完全に埋まっているものなど様々です。インビザラインではアライナーが歯を覆うことで力をかけて動かしていくため、埋伏歯はアライナーで覆うことができず動かすことができません。そのため埋伏歯を含む歯列をインビザラインのみできれいに整えることは難しくなります。
ここまでインビザラインができない代表的な症例をご紹介してきました。しかしこれらに当てはまるからといって矯正治療が全くできないわけではありません。インビザラインのみでの治療が難しい症例では他にどんな方法があるのかをご紹介します。
複数本の抜歯を行って歯を大きく動かす場合は抜歯でできたスペースに歯が倒れ込みやすくなります。ワイヤー矯正はこのような抜歯空隙への歯の移動が得意なので一時的にワイヤーを使ってそのスペースを閉鎖し、その他をインビザラインで調整していくという方法も有効です。また、インビザラインでは対応できない埋伏歯の挺出もワイヤー矯正では行えますので、埋伏歯の挺出のみワイヤーで行いその他をインビザラインで行うという方法もあります。審美面や清掃性で劣るワイヤー矯正をポイントで使うことによってワイヤー矯正の欠点を我慢するのも最小限で済みます。
歯科用アンカースクリューとはチタンでできた小さなネジの矯正装置です。この装置を顎の骨に埋め、その装置からゴムをアライナーにかけて力を加えます。アライナーだけではうまく力がかからないところに力をかけることができるためインビザラインが苦手とするケースにも対応することができるようになります。
アタッチメントとはインビザラインで矯正する際に補助装置として用いるもの、で歯に直接つける小さな突起物です。コンポジットレジンと呼ばれる歯と同じ色で小さなものなので目立つこともなく治療終了時には容易に外すことができます。これを歯につけることでアライナーによる矯正力が効率的に歯に伝わるようになり、インビザラインでの矯正が難しい症例でも歯の移動を可能にすることができます。
精査を行った結果、インビザラインでの治療が非常に困難であると診断された場合はワイヤー矯正単独での矯正治療をおすすめすることもあります。追加オプションにはなりますがワイヤー矯正でも目立ちにくい白の装置やワイヤーを使用して治療を進めることも可能です。
裏側矯正はワイヤー矯正の一つです。通常であれば装置やワイヤーは歯の表面につけて歯を動かしますが、裏側矯正では歯の裏側につけて行います。見た目を気にすることなく矯正治療をすすめることができますが、熟練した技術が必要となるため通常のワイヤー矯正より費用が高くなったり扱っている医院が少なかったりします。
この記事ではインビザラインができない症例についてご紹介してきました。しかし、ご自身の歯並びが今回ご紹介した症例に当てはまるかどうかを自己判断するのは非常に難しいと思います。MeLoSでは専門のスタッフがインビザラインに関する疑問にお答えします。ぜひ一度お問い合わせください。