症例

60代女性のインビザラインによる矯正治療

担当医の処置方針

患者様は口元が出ていることを気にされていました。また、オープンバイト(開咬)であることも影響し、臼歯部が崩壊し、歯を失っていくステージにありました。

歯が連続してないところにはインプラントを1本適応し、出っ歯と叢生に対しては抜歯矯正(インビザライン)で歯がない部分への歯の移動を行うことによって対応しました。抜歯スペースを効率的に閉じるために、歯の移動の固定源として、インプラントアンカー(TAD)を用いることにより、治療期間の短縮を狙いました。

インビザライン矯正においてインプラントアンカーを併用する場合は、必要以上に強いゴムで歯を引くのではなく、弱い力で他の歯への不要な力をキャンセルするイメージで行います。

治療後の口腔写真

Before

After

Before

After

インプラントアンカーの使用により、効率的に開咬を改善した

左右の下の大臼歯の少し前にインプラントアンカーを設置し、ゴムで犬歯をゆるく引きながら、インビザラインで矯正を進めました(写真は、80%程度終了した時点;16ヶ月 です)。

積極的に予後の悪そうな歯(神経を失った銀歯)を抜歯することによってほとんど天然の歯で咬合できる状態を目指しました。

担当医師コメント

HANA Intelligence歯科

治療ディレクター 植田憲太郎

抜歯矯正では、インプラントアンカーを併用する方が歯のコントロールをやりやすくなるため、総治療期間を減らすことができる可能性を高められます。

他の外科手術と異なり、インプラントアンカーの設置には極少量の麻酔で行えるため、ほとんど痛みや副作用は伴いません。本症例では、インプラントとインプラントアンカーを用いることによって、治療期間の無駄な延長を無くすことに成功しました。

治療に伴う一般的なリスク・副作用

  •  ■矯正治療(インビザライン治療)
    ・最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1,2週間で慣れることが多いです。
    ・歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
    ・装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
    ・治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
    ・歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
    ・ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
    ・ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
    ・治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
    ・治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
    ・様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
    ・歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
    ・矯正装置を誤飲する可能性があります。
    ・装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
    ・装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
    ・装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやり直す可能性があります。
    ・あごの成長発育によってかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
    ・治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
    ・矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。

    ■インプラント治療
    1. インプラント治療は、保険適用外の治療です
    2. インプラント治療は、顎の成長が終了した方が適用となります。また、妊娠中の方、妊娠の可能性のある方、授乳中の方は、その期間中はインプラント手術を行いません。
    3. 心臓疾患、骨粗鬆症、脳血管疾患などの方は、内科的な面からインプラント治療に適さないケースがあります。また、普段服薬しておられるお薬も治療に影響する場合があるので、治療前に歯科医師に申告してください。
    4. インプラント治療は、外科手術を行う必要があります。手術後、痛み、腫れ、出血、知覚の異常が生じる場合があります。
    5. 歯周病の発生リスクが高いとされる糖尿病の方、口腔内の衛生状態の悪い方、喫煙者の方は、免疫力や抵抗力が低下しやすいため事前に生活習慣の改善・治療が必要な場合があります。
    6. インプラント治療は、顎の骨に穴をあけて人工の歯根を埋め込みその上に人工の歯を被せるため、インプラント体が骨に結合するまでに数ヶ月要します。
    7. インプラント手術の際に下顎神経に触れた、もしくは近かったなどの影響により、下歯槽神経の損傷(知覚異常や鈍麻)を起こす場合があります。もしインプラントによる神経の圧迫・損傷・切断が起きた場合は、インプラントを撤去します。状況によっては、経過を見る場合や、内服薬で治療を行う場合もあります。
    8. 歯がない箇所のリカバリー治療では、欠損箇所のみの治療ではなく、全体の噛み合わせを考慮した治療が必要になります。
    9. インプラント治療後は、磨き残しのプラークが原因のインプラント周囲炎になる可能性があります。定期検診とメインテナンスを継続して口腔内の衛生状態を清潔に保つ必要があります。
    インプラントは人工物であるためむし歯にはなりませんが、インプラント周囲炎のリスクがあるので日ごろから丁寧なメインテナンスが必要です。