MeLoS認定アライナー矯正教育担当講師。長崎大学歯学部卒業、東京医科歯科大学病院総合診療科にて研修後、複数の歯科医院で勤務しインビザライン矯正やインプラント、口腔外科分野を含む各種治療経験を豊富にもつ。歯科医師むけ専門書の翻訳なども行う。
インビザラインとは、少しずつ形の違う透明のマウスピースを周期的に交換していくことで理想の歯並びに近づけていく矯正方法です。目立ちにくく、違和感も少ないため近年人気を集めている歯列矯正治療の方法です。この記事では近年よく聞く「口ゴボ」という顔貌がインビザラインで治すことができるのか、口ゴボの原因や治療方法も含めてご説明していきます。
近年「口ゴボ」という顔貌を気にされる方が増えてきました。一般的に矯正治療が必要だと感じられやすい叢生（歯がガタガタに並んでいる歯並び）などはなくても口ゴボにお悩みになる方は多くいらっしゃいます。
インビザラインで口ゴボを治すことは基本的には可能です。しかし、原因には様々なものがあり、全ての症例にインビザラインが適応であるとは言えません。インビザラインでは治りづらい症例、治らない症例もあります。
そもそも口ゴボという言葉を初めて聞いた、または聞いたことはあるけど具体的にどういうものなのかは知らないという方も多いのではないでしょうか。口ゴボとは上下顎前突とも呼ばれ、口元が全体的にもっこり出っ張った状態のことです。あまり良い表現ではありませんが猿の口元のように膨らんでいる見た目です。Eラインも乱れてしまうので正面の顔貌に加えて横顔の見た目も悪いと気にされている方も多いです。歯が出ている、と聞くと「出っ歯」を思い浮かべがちかと思いますが「口ゴボ」と「出っ歯」は異なるものを指します。では、口ゴボと出っ歯はどのように違うのでしょうか。これは患者様からの質問でも多く聞かれます。口ゴボには医学的な定義はありませんが、一般的には
口ゴボ：上下両方の唇が出っ張っている
出っ歯：上唇のみが出っ歯ている
のように区別されます。
口ゴボの原因にはさまざまなものがあり、それらが複合している場合もあります。ここでは口ゴボを引き起こす原因となる代表的な５つについてご紹介していきます。
骨格や歯並びは遺伝的な要素が非常に大きいものです。親や親族に口ゴボの方がいらっしゃると遺伝的に口ゴボになる可能性が高くなります。遺伝によるものは予防することができません。気になる場合は早めに矯正に関する情報収集を行い、適切な時期に矯正を始められるようにしておくのが良いでしょう。
歯並びが形成される時期から口呼吸をしている方は口ゴボになりやすいです。口で呼吸していると常に口が開いている状態になり舌が下顎の方に落ちた状態になります。この状態を低位舌と呼びます。舌の位置が本来の理想である上顎の裏から外れた位置にあることで、上顎の成長が支えられず歯並びが乱れます。また舌が下顎の歯を押してしまい前に飛び出してきてしまいます。その結果口ゴボになってしまうのです。
幼児期の指しゃぶりは上下の前歯が指によって押され、前に飛び出したり傾斜しながら並んでしまうため口ゴボになってしまいます。また上下の歯の間に隙間ができるのでそこに舌をいれて前歯を押してしまう癖を誘発しやすく、指しゃぶりをやめても自然に口ゴボが改善されていくことは少ないです。
アデノイド顔貌とは幼少期に鼻と喉の奥にあるリンパ組織が肥大することで引き起こされる特有の顔つきのことです。アデノイド顔貌の特徴は・口元が前に出ている（口ゴボ）・二重顎になりやすく顎と首の境目がわかりにくい・顔全体に丸みを帯びている などがあります。アデノイド顔貌の方は鼻で呼吸がしづらいため幼少期から口呼吸となり、歯並びがガタガタになってしまったり、下顎が十分に発達しなかったりします。歯並びが悪いために唇が前に押し出されてしまったり、下顎が未発達なために口元が顎に対して前に出た形となったりして口ゴボとなります。
ガミースマイルとは笑った時に上顎の歯茎の部分が広範囲に見える口元のことを指します。ガミースマイルになってしまう原因としては、
・上唇を持ち上げる筋肉の力が強すぎる
・上顎が大きく前に出た骨格である、等があげられます。
骨格的にガミースマイルである場合、上顎が前に出ているのでガミースマイルとともに口ゴボとなることが多くなります。
インビザラインで口ゴボを治すといっても上で紹介した口ゴボの原因・症状別によってアプローチの方法は異なります。それぞれに対する治療方法をご紹介いたします。
歯並びの遺伝の場合は抜歯やIPR、遠心移動などを用いながらインビザラインで治療することができます。しかし骨格の遺伝の場合はインビザラインで骨格を変えることはできませんので外科的矯正治療を併用して治療を行わなければならない可能性があります。骨格が原因でも軽度の場合は歯の傾斜角度を調整することで多少の改善が見込めることがあります。
口呼吸で引き起こされた口ゴボは歯並びの問題なのでインビザラインで治せることが多いです。抜歯やIPRといった処置や歯列のアーチを広げたりすることで上下の前歯を引っ込めるためのスペースを作りインビザラインで矯正治療を行います。しかし根本的な原因である口呼吸を治さなければ後戻りしてしまう可能性も高いです。インビザラインでの治療中に習癖の除去にも積極的に取り組む必要があります。
指しゃぶりで引き起こされた口ゴボも歯並びの問題なのでインビザラインで治せることが多いです。インビザラインで上下の前歯の傾斜を正しい角度に修正し、後方に引っ込めていきます。しかし口呼吸と同様、指しゃぶりの癖がなくならないと簡単に後戻りを起こす可能性が高いです。せっかくきれいに並べた歯がすぐ戻ってしまっては治療が無駄になってしまいます。こちらもインビザラインでの治療中に習癖を除去できるよう取り組むことが大切です。
アデノイド顔貌では骨格的な問題が大きくなってくるため、インビザラインのみで治すのは困難であることが多いです。歯並びが悪く唇が押し出されているだけであればインビザラインで歯並びを治すことで口ゴボも治せます。しかし下顎が小さいことによる口ゴボはインビザラインでは治すことができません。理想の顔貌を手に入れるためには外科手術が必要になります。ワイヤーやインビザラインでの矯正と外科矯正を組み合わせたり、美容整形術を組み合わせたりすることで顔貌の改善を行うことができます。
ガミースマイルによる口ゴボも骨格的な問題がかなり大きくなってきます。上顎が大きく、前に出ている場合、インビザラインのみで顔貌の改善を行うのは難しくなります。こちらもワイヤーやインビザラインでの矯正と外科矯正を組み合わせることでガミースマイルと口ゴボを同時に改善させることができます。骨格的な異常による不正咬合と診断される場合は保険適用になります。
ここまででインビザラインで口ゴボの治療も可能であることがわかりました。インビザラインで治療を行うとどれくらいの期間・費用がかかるのでしょうか。大きく３つの場合に分けてご説明いたします。
抜歯をせずインビザラインで口ゴボを治すにはIPRや歯列の拡大でスペースを作り、前歯を後方に引っ込めたり、歯を少しずつ後ろに送って前歯を引っ込めたりします。抜歯をしないインビザライン治療は部分矯正と全体矯正両方で可能ですが歯を後ろに送るのは奥歯も動かす必要があるので全体矯正でのみ可能です。奥歯の噛み合わせがよく、ごく軽度の口ゴボであれば部分矯正で半年〜１年で30万〜60万円ほど、全体矯正を行う場合は2年前後で８０万〜１００万ほどの費用がかかります。
突出感がかなり強く上下の前歯をしっかり引っ込める必要がある場合は、抜歯を伴うインビザラインでの矯正治療となります。抜歯を行う場合は全体矯正の適応となりますので期間は２年前後、費用は８０〜１００万円ほどとなります。抜歯を行うと動かす量が大きくなるので期間は抜歯しない場合より長くなることが多いです。
インビザラインで歯列の改善のみを行って治すのが難しい場合は、顎の骨を切って顎の位置を変える外科矯正が行われることもあります。骨格の異常によって正常な噛み合わせが得られていないと診断された場合は、歯列矯正と外科矯正は保険適用となります。保険適用で治療する場合の歯列矯正はインビザラインが使えずワイヤー矯正のみです。期間は３年〜で費用は３０万〜６０万円ほどです。しかし、保険適用とならない場合の外科矯正は美容外科での手術で自費となります。自費診療は医院ごとに費用が異なるため各医院へお問い合わせいただく必要があります。
最近よく耳にするようになった口ゴボについて、原因や治療方法など代表的なものを中心にご紹介してきました。口ゴボの原因には歯並びの問題と骨格的な問題があり、どちらにアプローチするべきかによって適切な治療方法が変わってきます。どこに問題があるのかは歯科医師の判断が必要不可欠です。自分の口ゴボがインビザラインで治るのかどうか気になる方はぜひ一度MeLoSへお問い合わせください。最適な治療法を行うために専門のスタッフがカウンセリングいたします。
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