症例
60代男性のインプラント治療
担当医の処置方針
下の歯には部分入れ歯、上の歯にはもともと総入れ歯が入っていましたが、人工の歯のすり減りやかたつきを認めました。患者様はできるだけ美味しくごはんを食べられる形をご希望されたため、インプラントを用いた治療を行うこととしました。下の歯は、インプラント4本で安定する形を実現できたため、取り外しをしなくてよい固定式、上の歯は歯がない本数が多すぎるため、予算の関係でインプラントオーバーデンチャーで治療することとしました。
治療後の口腔写真
Before
After
上の義歯の人工歯も刷新しましたので、きれいな歯の形を実現できました。
Before
After
治療前の下顎は部分入れ歯でしたが、治療後は固定式のインプラントの歯になりました。奥歯の噛み合わせも何でも噛める噛み合わせになっています。
術前術後のレントゲン写真
術前術後のレントゲン写真です。 上下とも、インプラントを埋入しました。上の顎のインプラントはロケーターという装置を用いております。臼歯部のインプラントはティッシュレベルインプラント、前歯分のインプラントはボーンレベルインプラントを採用しております。適切な種類のインプラントを選択することにより、術後の歯周組織の安定や、インプラント治療の長持ちを実現できます。
この症例に使用した装置と費用
インプラント、セラミックを用いた咬合回復治療 | 約 4,410,000 円(税込) |
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※備考
インプラント8本、セラミック7本、ロケーターを用いたインプラントオーバーデンチャーの総額
インプラント治療に伴う一般的なリスク・副作用
- ①歯周病菌への感染
手術後、定期的にメンテナンスを受けないと、インプラントと歯肉の周囲に炎症が起きます。進行するとインプラントを支える顎の骨が溶けてしまいます。
どんな治療であれ、歯科医院で歯周病の検査を受け、PMTCでお口の中を清潔に保つことが大切です。
②骨の厚みや高さの不足
原因は骨密度や骨量の不足にあります。骨の状態を把握せずにインプラントを埋入すると、このようなトラブルが起こります。
③見た目の問題が起こる
埋入したインプラントに問題が生じることがあります。特に前歯のインプラントは、見た目の問題が起こりやすいです。
歯が抜けて外的刺激を受けなくなると、その部分の骨は痩せていきます。インプラント埋入後も少しずつ骨量が減り、歯肉も退縮することから、インプラントの歯が長く見えることがあります。
また、インプラント部分の歯肉が薄いと、金属の歯根部分が透けてしまい、黒っぽく見えてしまいます。
④金属アレルギー
金属アレルギーは、金属が汗などで溶け出してイオン化することでアレルゲンとなります。ですがアレルギー反応をしやすい金属・しにくい金属があります。
インプラント体のほとんどは「チタン」という金属でできています。チタンはイオン溶出しにくいため、アレルギー反応がほとんど起こりません。しかしチタンアレルギーは存在するため、気になる方は事前にパッチテストを受けると良いでしょう。
⑤骨との結合がうまくいかない
骨粗しょう症などが原因で、インプラントの周囲の骨密度が低いと結合しにくくなります。
⑥糖尿病
高血糖だと傷が治りにくいため、無計画なインプラント手術はおすすめできません。また、高血糖の状態では免疫系細胞の活動が低下するので、歯周病菌への感染リスクが高くなります。
逆をいうと血糖値が安定すればインプラント治療ができるため、かかりつけ医と歯科医師が連携し、血糖値をコントロールすれば、リスクはかなり抑えられます。
⑦人為的なミスが起こることもある
ミスが起こるおもな原因は、不十分な検査や診察、担当医の経験不足・技術不足などです。インプラントで術中ミスが起こった場合、確率としては低いものの、生涯改善が見込めない神経麻痺などを引き起こすリスクもあります。
⑧インプラント手術直後は、違和感・痛み・腫れ・出血などが発生する場合がありますが、大半は2〜3日でおさまります。
⑨インプラントが骨に接着するまでに最低3ケ月〜6ケ月程度の治癒期間を要します。また、インプラントを埋め込む骨の厚みを増やす手術を行う場合、さらに期間を要することになります。
⑩神経の圧迫・損傷
神経を損傷すると、口周りや舌の感覚の麻痺やぴりぴりとした痺れが生じます。
⑪オーバーヒートによる骨壊死
オーバーヒートによる骨壊死は痛み、腫れ、熱感をもたらすだけでなく、インプラントと骨がうまくくっつかなくなる原因でもあります。
⑫埋入したインプラントが上顎洞の骨や粘膜を突き抜けて上顎洞に達してしまうと、感染を起こして副鼻腔炎や蓄膿症になることがあります。
担当医師コメント
HANA Intelligence 歯科•矯正歯科
治療ディレクター 植田憲太郎
最初は噛み合わせも不安定で入れ歯もかたついていましたが、術後はタコでもイカでも食べられるようになったようです。 インプラントオーバーデンチャーにはロケーターという維持機構を用いております。外すのには力は要らないのに、食事中に外れることはありません。