症例

50代女性のインプラント治療

担当医の処置方針

左下が義歯を作ったが使えない、左でも噛めるようになりたいとのことで、より噛めるようになるにはインプラントが必要と話をし、噛み合わせをしっかり作るには噛み合う歯が挺出(噛もうとして上顎の歯が下がってきている)している部分を治療する必要があること・また前歯部の審美改善を指摘しました。 まず下顎に2本インプラント埋入を行い、待時中にホワイトニング及び左上臼歯部の根治・補綴のやりかえを行い その後前歯のセラミック治療を行いました。

治療後の口腔写真

Before

After

Before

After

Before

After

この症例に使用した装置と費用

歯科用インプラント セラミック修復物
約 957,000 円(税込)

※備考

担当医師コメント

のだ歯科クリニック

院長 野田憲

長期にあまり合っていない義歯を使用し続けると、噛み合う相手の歯(今回であれば左上の臼歯)が挺出してしまい、それにより余計に義歯の不具合(噛みにくい、噛むと歯茎が痛いなど)を生じることがあります。 そのようなケースでは、咬合平面を矯正治療や補綴治療で整え、対合に綺麗にインプラント治療をすることが非常に有効な場合が多くあります。今回のケースでは、挺出した歯のクラウンを再製することにより、咬合平面の是正を達成しております。

インプラント治療・セラミック治療に伴う一般的なリスク・副作用

  •  ■インプラント治療

    ①歯周病菌への感染
     手術後、定期的にメンテナンスを受けないと、インプラントと歯肉の周囲に炎症が起きます。進行するとインプラントを支える顎の骨が溶けてしまいます。
    どんな治療であれ、歯科医院で歯周病の検査を受け、PMTCでお口の中を清潔に保つことが大切です。
    ②骨の厚みや高さの不足
     原因は骨密度や骨量の不足にあります。骨の状態を把握せずにインプラントを埋入すると、このようなトラブルが起こります。
    ③見た目の問題が起こる
     埋入したインプラントに問題が生じることがあります。特に前歯のインプラントは、見た目の問題が起こりやすいです。歯が抜けて外的刺激を受けなくなると、その部分の骨は痩せていきます。インプラント埋入後も少しずつ骨量が減り、歯肉も退縮することから、インプラントの歯が長く見えることがあります。
    また、インプラント部分の歯肉が薄いと、金属の歯根部分が透けてしまい、黒っぽく見えてしまいます。
    ④金属アレルギー
     金属アレルギーは、金属が汗などで溶け出してイオン化することでアレルゲンとなります。ですがアレルギー反応をしやすい金属・しにくい金属があります。インプラント体のほとんどは「チタン」という金属でできています。チタンはイオン溶出しにくいため、アレルギー反応がほとんど起こりません。しかしチタンアレルギーは存在するため、気になる方は事前にパッチテストを受けると良いでしょう。
    ⑤骨との結合がうまくいかない
     骨粗しょう症などが原因で、インプラントの周囲の骨密度が低いと結合しにくくなります。
    ⑥糖尿病
     高血糖だと傷が治りにくいため、無計画なインプラント手術はおすすめできません。また、高血糖の状態では免疫系細胞の活動が低下するので、歯周病菌への感染リスクが高くなります。
    逆をいうと血糖値が安定すればインプラント治療ができるため、かかりつけ医と歯科医師が連携し、血糖値をコントロールすれば、リスクはかなり抑えられます。
    ⑦人為的なミスが起こることもある
     ミスが起こるおもな原因は、不十分な検査や診察、担当医の経験不足・技術不足などです。インプラントで術中ミスが起こった場合、確率としては低いものの、生涯改善が見込めない神経麻痺などを引き起こすリスクもあります。
    ⑧インプラント手術直後は、違和感・痛み・腫れ・出血などが発生する場合がありますが、大半は2〜3日でおさまります。
    ⑨インプラントが骨に接着するまでに最低3ケ月〜6ケ月程度の治癒期間を要します。また、インプラントを埋め込む骨の厚みを増やす手術を行う場合、さらに期間を要することになります。
    ⑩神経の圧迫・損傷
     神経を損傷すると、口周りや舌の感覚の麻痺やぴりぴりとした痺れが生じます。
    ⑪オーバーヒートによる骨壊死
     オーバーヒートによる骨壊死は痛み、腫れ、熱感をもたらすだけでなく、インプラントと骨がうまくくっつかなくなる原因でもあります。
    ⑫埋入したインプラントが上顎洞の骨や粘膜を突き抜けて上顎洞に達してしまうと、感染を起こして副鼻腔炎や蓄膿症になることがあります。


    ■セラミック治療

    ①健康な歯を削る必要があります。セラミック歯は、少し多めに歯を削らなければなりません。陶材という性質上、破折などを免れるため、詰め物・被せ物に厚みを持たせる必要があります。削る量が多いからと言って、歯の長期安定性が低下するわけではありません。
    ②強い力がかかると割れたり欠けたりします。歯科用陶材であるセラミックは、とても硬い材料ですが、強い力がかかると割れる、あるいは欠けることがあります。天然歯とほぼ同じ強度です。
    ③保険が適用されません。セラミック治療には、健康保険が適用されません。そのため、銀歯など保険治療と比較すると費用は高くなります。
    ④歯ぎしり食いしばりで割れることがあります。歯ぎしりや食いしばりを日常的に行っている人も少なくありません。そうしたブラキシズムと呼ばれる悪習慣は、セラミック歯に過剰な圧力を加えることで、破折や脱離を招くことがあります。
    ⑤歯の神経を取らなければならないことがあります。セラミック歯は、ある程度の厚みを確保しなければならないため、歯を形成する過程で歯髄の露出が避けられないこともあります。そうしたケースでは、セラミック歯を被せる前に歯の神経の治療を行うことがあります。
    ⑥理想の色を出せないこともあります。歯の色は、個々人によって違いが見られます。また、色の見え方や価値観などにも個人差があるため、セラミック歯を理想の色に仕上げられないこともあります。また、残った歯の色調の変化や追加で行った被せ物の治療などによって、セラミック歯が逆に目立つようになることもあり得ます。
    ⑦セラミック歯の色に合わせてホワイトニングするのは難しいです。歯のホワイトニングを検討中の方は、セラミック歯を入れる前に施術することをおすすめします。ホワイトニング後の天然歯の色にセラミック歯の色調を近づけることは、比較的容易だからです。逆に、セラミック歯の色に合わせてホワイトニングすると、色の不調和が生じやすくなります。